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 リーマンブラザーズ 詐欺貸付の幇助責任ではすまされない、子会社の違法貸付の実態
他社が手をひくなか、2000年前から、機能していなかったサブプライム・モーゲージの証券引受委員会、リスク管理委員会。利益だけを追い求め、審査はいくら儲かるかで決まっていく。
会社として、何が行われたかの事実は、First Alliance Mortgage証券化の審査、引き受けのdue diligenceからみえる。
あこぎなリーマン predatory lenderの数年前の忌まわしい歴史の記憶が蘇り、それは今現実に起きていたという。

Subprime mortgage の問題で、すでに消えたはずの用語が、急に復活してきている。predatory lending。 
2000年代初め各州のanti-predatory lending act施行で、州HOEPA適用除外となったsubprimeの領域では、実質的predatoryはabusive lending practiceと名を変えた。unfair, deceptive loans 不公正、詐欺して、貸付営業をすることを意味する。中身は、度がすぎない程度の違いで、質的に、債務者から毟り取るという営業姿勢に変わりない。

2007年 6月27日、WSJのMichael Hudson記者は、詐欺貸付について、証券化による資金供給者としてLehmanが幇助責任を問われたFirst Alliance Mortgage事案の詳しい紹介とともに、全米11位の規模に育てあげた子会社BNCの会社を提訴する元従業員の証言や他をとって、リーマンがabusive lendingに手を染めていた証拠事実を紹介した。

BNCの不正貸付については、WSJの調査記事LENDING A HAND How Wall Street Stoked The Mortgage Meltdownにまかせ、First Alliance Mortgage裁判例を、概略してみよう。
 

In Re First Alliance Mortgage Co., et. al., 298 B.R. 652, 2003 U.S. Dist. 
手続きは、消費者クラスアクションを併合している。
共同被告には、Lehman Commercial Paper Inc., et al.,

 本件、連邦第9巡回控訴裁判所の判決は、今後の詐欺貸付に関する証券会社の幇助責任法理aiding and abetting liabilityの適用について、ひとつの有益なガイダンスを与えてくれるだろう。

不公正、詐欺貸付のabusive lendingの実態

 First Alliance Mortgageは、カリフォルニアで、消費者向け、特に高齢者に、高額のhome equityをもっている消費者に、home equity loanを貸し出す業務を主としていた。First Allianceは、貸付時のポイントやらその他手数料を請求していたが、金利や元本支払額に組み込んでしまって、それらがどのくらいなのかをわからなくしてはぐらかし、Truth in Lending Act にしたがった正確に開示することをせず、債務者を騙したというのが発見された事実。多くの債務者は、ポイントや手数料を請求されており、支払い合意した金額に平均して11%の上乗せがあった事実を認識していなかった。

金利、個別の借入手数料、すべての手数料を含むAPR(年率で計算された金利を含む費用)()は、Truth in Lending Actにもとづき、貸し手が借り手に対して開示を求められる。ARPが提示されれば、提示された金利の大小があっても、その他の手数料を含めてみたときに、どの条件が有利か、他社比較ができるようになる。一般に、不動産鑑定費用やタイトル保険などはAPR計算から除外されるが、どれが含まれるかについての正式な基準がないため、業者により、異なる結果となることがある。またローンが満期まで保有される場合と、5年で借り替えられてしまう場合では、APRは異なってくる。ローン期間が長ければ長いほど、APRは低くなり、ローン期間が短くなれば、APRは余分の元本支払分だけ上昇するという点についていえば、First AllianceのAPR説明は正しい。ARPの増加は、期間が短くなれば、手数料をふくめて借入れる「借入金額」は変わらないが、ローンの貸付手数料、その他のローン手数料は、借入手数料の大きな比率を占めるからだ。First Alliance Mortgageの手数料は高額のため、APR増加は劇的だ。First Alliance Mortgageは、貸付手数料、その他の手数料、プリペイメント損害金、真実の借入元本総額(ブローカー手数料、民間モーゲージ保険料などが元本上乗せされ、それらを借入額に含めて分割して支払われことがある)など、意図的に情報を開示しなかった。

手数料を含めた「借入金額」の開示というは、債務者が合意しているローン金額との混乱を招き、誤導する詐欺的手法である。First Alliance Mortgageは、貸付手数料、その他のさまざまな手数料、プリペイメント損害金を開示していなかった。借入金額という用語は、Truth in Lending Act、Regulation Zにおいて使われ、ポイントや大部分の手数料を除くローンのグロス金額と定義されている。ローン・オフィサーは、貸付手数料を、最低金利あるいはFirst Alliance Mortgageがローンをするのにかかる最低金額と偽って説明していた。

訴訟と捜査

     •  高齢者に対する不正abuse, 不公正で、誤導的貸付慣行があったとする消費者のFirst Alliance Mortgageに対する訴えは、1996年後半以降、急増した。
             Mary Ryan v. First Alliance Mortgage Co., et al., No. CV759815 (Aug.2,1996);
             Lucretia Wilder v. First Alliance Mortgage Co., et al., No.CV760638 (Sept 10, 1996);
             Velda L. Durney v. First Alliance Mortgage Co., et al., NoCV765935 (May 2, 1997);
             Henry M. Hong, Caro J. Hong v. First Alliance Mortgage Co., et al., No.784938-3 (1997)
     •  98年9月23日、First Alliance Mortgageは、法務省私権権局(civil right)から、連邦司法省及びアリゾナ、フロリダ、イリノイ、マサチューセッツ、ミネソタ、NY, ワシントンの各州の司法長官は、貸付行為について共同捜査を開始したという書簡を受け取った。
     •  98年10月30日、マサチューセッツ州司法長官は、州民を代表して、マサチューセッツ州上級裁判所に、First Allianceに対して、業界の一般基準からあまりに高額で、不当で、不法なポイント、手数料、その他の請求を差し止めるよう訴えを起こした。
     •  98年12月1日、イリノイ州司法長官は、イリノイ消費者詐欺法、イリノイ出資法、詐欺取引慣行法に違反するとして、First Alliance Mortgage を、Cook County 巡回裁判所に提訴した。
1998年12月3日、AARP(高齢者生活支援を目的とする消費者アドヴォケート)は、カリフォルニア州ビジネス・職業法17200条のもとづき、不公正業務慣行と高齢者に対する不正(abuse)を理由に訴えを起こした。
    •  1998年12月4日、ニュージャージー連邦地方裁判所に、ニュージャージー消費者保護法、Truth in Lending Act, 関連連邦規制違反により、クラスアクションが提訴された。
    •  1999年2月2日、カリフォルニア州第6控訴裁判所は、First Allianceの強制調停申立を認めないとする下級審Pagter v. First Alliance Mortgage の決定を是認した。
    •  1999年3月10日、ミネソタ連邦地方裁判所は、State of Minnesota v. First Alliance Mortgage Company, et al.事件について、First Allianceに対して、割引ARMを販売すること、および消費者に対して、「First Alliance Mortgageからのローンの手数料請求に関する重要通知」と称する追加通知すること、を未来永劫禁じた。裁判所の決定で、First Allianceは、借りようとする顧客にその他のいっさいの開示文書を提供する前に、通知を提示することが強制された。
    •  1999年4月23日、カリフォルニア州第6控訴裁判所は、Durney v. First Alliance Mortgage, et al.事案について、決定を下し、First Alliance Mortgageの強制的調停利用特約(提訴禁止条項)は強制力がないこと、First Alliance Mortgageの貸付主任の詐欺営業に基づき契約に至ったこととする第一審判決を是認する決定をした。
    •  1999年5月12日、AARPは、不公正、不法、詐欺、騙し営業行為慣行で、修正告発した。
1999年9月21日、ミネソタ州は、First Alliance Mortgageと、ミネソタ州の借り手に、50万㌦の還付する合意に至った。100人の州民借り手に、各$4000ずつと、他にFirst Alliance Mortgageで借換をした各債務者に$2000のクロージング費用。またFirst Alliance Mortgageは、ARMによるteaser金利商品を販売することが禁じられた。
    •  2000年1月、First Alliance法律顧問は、会社の係争中の訴訟リスクは、250~310万㌦に上ると見られると推定した。
    •  2000年3月、NY Timesは、First Alliance Mortgageの貸付手続きを極めて問題とする記事を出した。この記事は、Wall Street投資銀行の関与をほのめかし、特にLehmanの資金調達を担った役割について、焦点を置いていた。ABC Newsが、報道20/20で同様の内容をオンエアー。
    •  2000年3月23日、First Alliance Mortgageは、Chapter 11破産法適用申請する。

貸付金の資金源

貸付資金は、1998年12月まで、7年間にわり、プルデンシャル・セキュリティーズのコミットメント・ラインによって供与されてきたが、12月23日、プルデンシャルから突然の与信枠利用停止決定があり、First Alliance Mortgageは、監査法人からgoing concernさえも懸念されることになる。リーマンは、1998年12月30日、First Allianceが貸すモーゲージを担保にとって、ウエアハウス・ラインのためのconduitからの融資枠らの引出を承認した。(詳細は後述の通り)

1999年、1件あたり1億ドル、四半期ごとに4件の証券化の発行により、最終的に4億5千万ドルもの資金を供与がなされた。ウエアハウスによる引き出されたローンは、証券化によって調達される資金で返済が計画され、債務が消滅して、質権が解除され、証券化の担保設定がなされる。そして次のローンが引き出される。第一四半期3月19日、1億1500万㌦、第二四半期6月16日9千万㌦、第三四半期9月17日、1億1744万㌦、第四四半期12月17日、1億307.5万㌦。リーマンは、すべての取引で単独引受を務め、総額220万㌦の引受手数料を得た。こうして、First Alliance Mortgageは、不正な貸付の資金をリーマンに依存した。

1999年10月1日、リーマンは、First Alliance Mortgageに対するウエアハウス・ラインを1年延長し、2000年10月までとした。10月12日、リーマンは、First Alliance Mortgageウエアハウス・ラインを審査し、報告書を作成した。その報告には、オリジネーターの最大の懸念は、リーマンがFirst Alliance Mortgageの高コスト貸付の営業戦略で債務者ベースに晒される係争リスクであると記載してある。

リーマンのdue diligenceと融資関係

 リーマンは、home equity portfolioを担保に資金供与をするにあたり、数年間にわたりdue diligenceを行っていた。リーマンのFirst Alliance Mortgageとの最初の出会いは、Kurt Locherがmanaging directorとしてリーマンに入社した1995年に始まった。1995年6月、First Alliance Mortgageは、リーマンに、業務上のオペレーション、財務情報を含むdue diligence 秘密情報文書を送付した。7月、リーマンは担当者を派遣して、会社の組織構図、業容がリーマンが金融サービスを提供するに健全であるかのdue diligenceにあたらせた。

オンサイトDue diligenceレポートには、First Alliance Mortgageの強みと弱みが共に報告されていた。強みには、高額のhome equityをもつ潜在顧客に対するターゲティング、マーケティングと勧誘、潜在顧客が調印の席にいったん着いたときのクロージングをする能力、First Alliance Mortgageの引受指針に合致する債務者であること、債務不履行の可能性が低いことや、積極的な回収態勢などが上げられた。弱みには、home equityを有し、現金拠出が必要な債務者に対するローンの高い販売プレッシャー、高齢者に対する数多くのローンの実行、回収のやり方が積極的なため起こった法律紛争、借り手の所得というのではなく、担保価値だけに依存した貸付慣行など。担当者の報告では、この業界のどこかの業者に政府介入があるとすれば、First Alliance Mortgageは、一番前にいる候補者だと結論付けていた。

Due diligenceの一環として、First Alliance Mortgageと経営者に関してインターネット検索を行い、Seattle Timesが、1995年7月23日、First Alliance Mortgage営業マンのローン条件非開示についての消費者からの苦情に対して、ワシントン州が捜査しているという記事を見つけていた。

1995年7月26日、David Bartlettは、1億ドルのローン・ファシリティの承認を求める文書を作成した。7月28日、リーマンはオフィサーを含む3人が、First Alliance Mortgageの流通市場部長と、電話会議を開き、出席したひとりの役職者が、カリフォルニアでのクラスアクション和解の件とSeattle Timesの記事のワシントン州の捜査の件について言及した文書を残した。

リーマンの投資銀行モーゲージ証券コミットメント委員会は、ファシリティを検討し、承認したが、First Alliance Mortgageからは断られ、その後使われていなかった。

1996年9月、リーマンは、プルデンシャル・セキュリティーズの主たる融資枠に対するバックアップ・ラインとして ウエアハウス与信枠上限を2500万㌦として延長した。当初の利用のあと、与信枠は、1997年1月から6月までの間、使われることがなかった。1997年7月から9月にかけて、1500万㌦が引き出された。その後、1998年いっぱい、与信枠からの引き出しはなかった。

1996年後半から1997年にかけて、リーマンは、First Alliance Mortgageの公募証券化で(1996-4、1997-1、1997-2、1997-3号)、引受主幹事プルデンシャル・セキュリティーズのバックアップ・マネジャーを努めた。

1998年9月、バックアップのウエアハウスの与信枠を提供していたFirst Unionが、10月30日付け、バック・アップのウエアハウス・ファシリティを終了する旨の通知があり、リーマンはFirst Unionに肩代わりして、ウエアハウス・ファシリティを設ける関心があるかどうか、First Alliance Mortgage に確認をされた。リーマンは前向きに検討するとの返事で、First Alliance Mortgageは、手続きを開始するよう財務情報を提供した。

1998年12月半ば、リーマンは、First Alliance Mortgageに関連すべての記事と同社がかかわるすべての訴訟を調査し、First Alliance Mortgage主たる経営陣のバックグラウンド調査を行っていた。借り手や州の規制当局からいくつかの訴えがでているとのニュース記事が見つけられた。1998年12月、First Alliance Mortgageは、係争中の全訴訟リストをリーマンに提供した。そのなかには、さまざまなニュース記事で取り上げられていた州規制当局の処分が記載され、係争は、重大なものと通常業務のなかでおこるものに分類されていた。12月15日ころ、First Alliance Mortgageは、リーマンに、さまざまな企業due diligence文書と情報を提供し、そのなかには、組織図、経営陣の経歴書、収入内訳、自己の証券化レジデュアル持分の評価、四半期営業報告、プールごとのローン損失、1999年の予測草案、支店網と場所のリスト、プロダクション・ウォーターフォール、経営者書簡、First Alliance Mortgage とプルデンシャル・セキュリティーズとの延長修正暫定ウエアハウス並びに担保合意書が含まれた。

1998年12月16日、First Alliance Mortgageの会社顧問が、Lehmanに、イリノイ、ミネソタ、マサチューセッツ州司法長官らが申し立てるという告発のコピーをリーマンに送ったのは、リーマンが1億5千万㌦のウエアハウス与信枠の提供する前だった。リーマンの社内法律顧問は、First Alliance Mortgageから受けとった告訴と、First Alliance Mortgageに対するいくつかの係争で結審された命令を審査した。これらの告発のほぼ全てが、ローン担当者と借り手との間の営業上のトラブルだった。12月23日、First Alliance Mortgageは、リーマンに、3州の訴訟、消費者詐欺に関する18の訴訟、司法省検査を開示する訴訟予定表をファックスした。

1998年12月23日ころ、プルデンシャル・セキュリティーズは、First Alliance Mortgageとのウエアハウス・ファシリティを更新しないと伝えてきたことは、First Alliance Mortgageにとって寝耳に水だった。契約は、1998年12月31日に終了する。First Alliance Mortgageは、代替のウエアハウス与信枠が12月末までにみつけられなければ、監査人からgoing concern意見を取り付けられない怖れが生じる事態となった。

1998年12月30日、リーマンは、First Alliance Mortgageと基本買い戻し合意書Master Repurchase Agreement(以下「MRA」)を結び、それにしたがい、Lehmanは、First Alliance Mortgageに、First Alliance Mortgageの有するモーゲージを担保の1億5千万㌦のウエアハウス与信枠を供与することを合意し、同日付、調印され、翌日、およそ1753万㌦が引き出された。ウエアハウス・ライン供与の見返りに、First Alliance Mortgageは、リーマンに220万㌦のコミットメント手数料、借入残額に対する金利支払い、未利用枠の残額に対する手数料を支払うことに合意した。ウエアハウス・ラインとgoing concern意見がなかったら、First Alliance Mortgageは、ほぼおそらく業務撤退していたか、消費者ローンを直接調達することができなくなるほど、大きな業務内容の変更、貸付の劇的な減少を迫られていたとみられる。

MRAの融資条件は、担保として質権設定されたモーゲージ価値の95%を融資するというもので、融資枠からの引き出しは、質権設定されたモーゲージ・ローンの額面価値の95%を上限とした。MRAの財務制限条項として、First Alliance Mortgageには、最低株主資本として6560万㌦、調整有形純資産価値として3250万㌦を維持することが要求され、また総レバレッジ率は5倍を超えてはならないことが求められた。

提出物として、四半期及び年次財務報告、First Alliance MortgageはMRA期間中、MRAの条件、要求にしたがっていることを証明する経営役職者の証明が求められた。ウエアハウス合意の規定では、調達の継続は、Lehmanのdue diligence調査を合意から45日以内に満足して終えることを条件としていた。1999年1月11日、Skadden Arpsは、due diligence要求リストを作成し、First Alliance Mortgageに送付された。リストには、政府訴訟に関するすべての情報を含んでいた。First Alliance Mortgageは、翌日即刻、求められた情報を送付した。1月12日、First Alliance Mortgageは、それに追加して、引受ガイドライン、First Alliance Mortgageの不動産鑑定マニュアル、収入明細、QC手続きマニュアルを提供した。

1999年1月14日、両者の代表者と間で会議がもたれ、First Alliance Mortgageの設立以降の歴史、貸付プロセス、引受、サービシング、クオリティ・コントロール、システム、これまでの証券化案件を含むすべての観点から業務オペレーションが査定された。訴訟については、もっとも大きな時間が費やされ、First Alliance Mortgageが重大とした訴訟事案名がリストされ、1件1件訴訟の現在の状況について概説された。リーマンのdeal teamメンバーは、8名だった。

1999年2月、当初First Alliance Mortgageをオンサイト訪問してdue diligenceを行った担当者は、ウエアハウス貸付グループから、同氏の事実認識と結論についての文書にまとめるように依頼された。1995年のdue diligenceレポートと同様の点に言及していたが、色調ははるかに楽観的だった。気がかりは訴訟で、特に州や協力なAARPの参入動向だった。

1999年2月5日、リーマンのクレジット・リスク管理は、資本レベルが十分であること、ファシリティのストラクチャーと条件を前提に、First Alliance Mortgageのため、コミットメント期間1年の1億5千万㌦のリバース・レポ・ファシリティ(3ヶ月を最大とする)を要請するレポートを出した。

1999年2月11日、リーマンのコミットメント・コミッティが開かれ、First Alliance Mortgageに対するウエアハウス・ラインと証券化を進めるかどうか検討された。コミッティ・メンバーに出された報告書には、1999年2月1日付けの担当者のdue diligenceメモ(1995年のdue diligenceメモが添付された)、First Alliance Mortgageの訴訟すべての概説が添えられた。報告書には、リーマン・ブラザーズの得られる手数料の総額は、450万ドルが予定されると書き込まれ、1999年First Alliance Mortgageの証券化でリーマンが単独引受主幹事の役割をすることを承認することを推薦していた。同会議で、コミットメント・コミッティは、全員一致でFirst Alliance Mortgageへのウエアハウス・ライン供与と証券化を承認した。

1999年から2000年にかけて、リーマンは、Clayton Groupに委託して、First Alliance Mortgageの貸し付けたloansのdue diligenceを行った。Claytonは、ローン及びローンの裏づけとなる文書が貸し手の要求やモーゲージに関連する州や連邦法規制にしたがっているかなど、ローン分析に特化したサービスを提供している。

リーマンDue diligenceまとめ
リーマンは、home equity portfolioを担保に資金供与をするにあたり、数年間にわたりdue diligenceを行っており、与信枠のコミットメントを求める受委員会への報告には、First Allianceに対して、96年以降継続して、詐欺の告発や多くの訴訟が提起され、司法省や州司法長官からの捜査などがはいっており、最大の引受リスクは、訴訟リスクだと記載されていたので、会社としてそれは認識されていた。vice presidentは、First Allianceが営業慣行を変えなければ、捜査の目が入るだろうと、報告していた。しかしリーマンは、それよりも、450万ドルの引受手数料のほうを選択した。

 リーマンのdue diligenceには、First Allianceの組織機構、経営方針だけでなく、ウエアハウスの担保融資から証券化が予定される対象となるモーゲージの引受方針、貸付方針、貸付ガイドラインも含まれており、コンプライアンス違反についても調査された。裁判記録には、説明こそないが、そこには高額の手数料についてもヒヤリングされ、コンピューター・データとしても提供を受けたと考えられる。98年末、プルデンシャルの突然の与信ラインの利用停止の主たる理由が、同社に対する大きなエクスポージャーというだけでなく、すでに発生していたさまざまな訴訟リスク上から来ていたことは推認できるだろう。

破産申請

2000年第一四半期、First Alliance Mortgageは、7700万㌦をリーマンのウエアハウス与信枠から引きだしていたが、2000年3月23日、返済することなくFirst Allianceは破産申請をした。2000年10月9日、破産法1102(a)(1)にしたがい、破産裁判所の命令で、借り手コミッティが任命された。2002年、9月10日、裁判所は、債務者の第一回修正の手続き併合の共同清算計画(5月6日付け)を確認し、債務者の実体的連結動議を承諾した。計画V.E.項では、破産管財の全未清算資産には、対立事件である債務者コミッティのLehman Commercial Paper Inc.およびLehman Brothers Inc.に対する請求が含まれる。   
消費者から、Lehmanに対して、幇助理論にもとづき、First Allianceの不正営業行為責任を求めるクラスアクション訴訟が提起された。消費者は数々の事実を示した上で、カリフォルニア法で、リーマンには賠償責任があると主張した。

 •  First Alliance Mortgageは、通常の営業行為のなかで、詐欺貸付をおこなっていた。
•  リーマンは、そうしたFirst Allianceの詐欺行為について、実態を認識していた。
•  リーマンは、First Allianceが詐欺をはたらくことを実質的に支援していた。

第9巡回控訴裁判所(2003.6.30)は、First Allianceの不正にリーマンの加担があったことについて、あいまいな嫌疑以上を求めたうえ、Lehmanは、本人のした特定の不正行為の実態を知っている立場にあったに違いない判示した。陪審員は、リーマンは、First Allianceの営業慣行では、胡散臭いことが行われているという以上のことを知っており、与信枠がそうした詐欺貸付の支援をするものだったと決定した。

 第9巡回裁判所は、リーマンが、First Alliance Mortgageが詐欺貸付営業を慣行化していたことの実態を認識していたと結論付けるに十分な合理性があるとして、陪審員がこうした事実やその他の証拠に依拠しているとした。

 破産申請があった時点で、リーマンは、ウエアハウス与信枠で、7700万㌦を貸しており、未証券化のままだった。消費者の訴えは、破産手続きにおいて、リーマンにモーゲージ質からの回収を優先するのではなく、equitable subordination法理によって、さらにはモーゲージのリーマンのコンディイットへの移転を危機否認して、一般債権者以下に扱おうというものだったが、裁判所は、equitable subordination法理は、債権者救済のために適用される法理であって、罰を課すための適用法理ではないと意見し、また詐欺的譲渡(fraudulent conveyance)危機否認の適用を認めず、質権設定の譲渡の効力を認め、担保からの回収に加えて、利息を含めて8300万㌦の支払いを認めた。

 証券法11条のdue diligence責任は、conductしていれば、責任は免責されるが、貸付方針を調査していて、法外な手数料が取られていることの認識を欠いたり、詐欺貸付が原因で訴訟が相次いでいた状況を知りながら、実態を調査していないとすれば、due diligence抗弁が認めるだけの根拠があるのか。due diligenceを然るべくしていれば、実態の認識をもったはずであり、資金供与は、詐欺を増殖させる機会を与えることを知りつつ、後押ししたことになる。すなわち、十分なdue diligenceをしていないとしても、違法性ある過失の有責性が問われ、due diligenceをしていれば、詐欺貸付を認識しながら、資金供与をしたことになり、それがなければ、営業が成立していないという点で、もうひとりの行為者secondary actorとしての責任を免れない。

 証券化された証券には格付は取得されていたはずだが、投資家からの苦情はでていないとみられる。損害は出ているだろう。なぜなら、証券化の対象となるローンに関して、詐欺貸付で、損害賠償性急が起こっているのだから、正当理由があれば、HOEPAにもとづき、解約とされることができるだろうし、First Allianceは倒産しており、補填できないのであえれば、投資に損害がでるのは、必然だからだ。なお倒産処理手続きでは、投資家からの補填請求の訴えはないとみられる。

不正貸付調査には責任を負わない格付機関

破産手続きとは別に、投資家は、リーマンに対して、幇助責任を求める訴えがあったかもしれない。投資家による訴訟がなければ、格付に対する非難も出ていない。訴えられても、格付は詐欺貸付の実態を知る立場になく、知らされておらず、立場上発行者側でないので、due diligence責任も問われないからだ。First Alliance Mortgageとの経営者や与信担当責任者、営業責任者との会議で、すでにメディアを通じて、First Allianceの不正貸付、法違反の噂をしっていても、その確認のため、それについて尋ねなければならない理由はないし、First Allianceが、そんな事実がないと説明すれば、それを真に受けて、提供された説明が虚偽であろうとも、調査義務はないし、正確であることを前提にして、格付されていれば、すべての責任を免責される立場におかれていることを、投資家は満足しているからだ。虚偽であることは、騒ぎが公知となれば、いつかは見つけられるだろう。そのとき、格付を消滅させればいいが、そうした法律上の問題について、格付は、かかわらないし、silentを通す。

消費者が求めるdeep pocketはどこか
裁判所は、貸付の前線にたって貸した主役だけでなく、裏にいた経済的支援者のsecondary責任を追及することを認めた。さらに、もうひとつ注意点は、消費者が傷をおった場合、陪審員は、懐の深い相手先を攻撃できるというもの。特に、驚きは リーマンに対する証拠が、がFirst Alliance Mortgageの詐欺貸付慣行の実態を認識していたと結論付けるに十分であると見出したことだ。First Alliance Mortgageに対する捜査も訴訟も、ただ告発や申立であって、詐欺があったという証拠ではない。しかしながら、控訴裁判所は、この点について、事実認定審の決定に従い、もう一度別の陪審員の意見を聞くことには躊躇が逢ったようだ。

 FTC Holder in due course doctrine 

 モーゲージ貸付の世界であれば、不正営業行為についての実態認識が求められるが、割賦販売金融では、FTC規則 Holder in due course doctrineが適用されるため、実態認識がなくても、資金供給者は、責任を追及させることになる。Truth in Lending Actの適用を受ける割賦販売金融契約は、FTCルールの適用をうけ、消費者契約には、割賦販売金融契約の譲受保有者(証券化のコンディイット、受託者が含まれる)は、当該契約の譲渡者に対して債務者が有するいかなる主張、抗弁からも切断されないという債務者への通知が求められる。このルールで、債務者は、譲受者が貸し手の不正の実態を知っていたことを証明する必要がなく、不正による損害に対して、共同責任equal liableが認められる。ただし、due diligenceして知っていないことが証明されれば、免責される。

 FTCのHolder in due courseルールでは、損害額が限定される。消費者は、契約にもとづき、実際に支払った金額だけについて救済されることができ、その後の債務残高の回収は禁じられる。 それに対して、州法による消費者保護法にしたがい、aiding and abetting 幇助責任法理では、消費者は、幇助者から、3倍責任、懲罰的損害賠償、弁護士費用についての回復が認められうる。ただし、割賦金融においても、ローンの譲りうけた保有者も、当初貸付業者の不正の実態を知っていたとの陪審員の決定があれば、全財産を剥ぎ取られる怖れがある。

コンプライアンスに関する田中弘幸教授の誤認識と再検討を問う

それにしても、アメリカ金融監督機関というのは、違法貸付についてのコンプライアンスのガイドラインも出していなくて、Regulation Zを発布していても、不正営業行為については、監視も、処罰もなく、消費者との不正、詐欺貸付紛争は裁判所任せで、監督機関はできるだけ民事不介入が方針のようだ。(サブプライム・サービサーに損失緩和策をとるようにと銀行監督機関の共同声明 ver.4 の⑤参照)

きんざいの月刊消費者信用で6回にわたる連載で、コンプライアンスと取締役の義務を論じられた田中幸弘教授は、法規制違反、コンプライアンスについて、ことさら厳しく罰する基準があるかのごとくに説かれるが、コンプライアンスの生みの親の国の金融コンプライアンスは、こういうことを言うのです。
それにしても、「コンプライアンス+田中幸弘」でグーグルと、数ページにわたり、同氏のコンプライアンス意識が理解できます。アメリカ法コンプライアンスのむつかしさは、連邦法、州法があり、それに金融機関のルールメーキングがあって、複雑です。サブプライム住宅ローンの金利って いくら?

我が国も金融機関も、田中教授が説かれる規範考量などなく、リーマンと取引し、利益をもたらし、間接的にも、First Alliance Mortgage貸付の原資を与えるのに、いささかの後ろめたさなど、感じていないのだ。法に照らして罰せられない範囲で、経済活動は自由なのだから。田中教授よ、現実を認識し、自らの理解の誤りを認めなさい。さもなければ、我が国金融機関が、捕食貸付に手を貸していたリーマンとの付き合いの認められない法的根拠がありますか。ただの倫理規範と処罰と救済の定めのある法とは違います。法違反がない限り、処罰などされるものですか。

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