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雑記帳
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債権譲渡登記と第三者対抗要件具備の機能不全
信託財産の責任と受託者の責任

--- 貸金債権の信託譲渡をめぐって

民事再生手続き申立以降、信託譲渡された信託財産にかかる回収金について、集金事務受託者からの引渡しは停止されたままだという。破産決定後以降、譲渡資産は、別除権となり、また委任は会社清算ゆえ、いずれにしろ終了するる、信託銀行は自分で回収するほかない。したがって、貸金業法24条2項通知を兼ねて、債権譲渡通知を譲渡人と共同して送付するほかなかろう。
信託銀行が回収金を受領できていない背景は、手続き決定というだけの問題ではない。2重譲渡がなされているから、問題は複雑になる。

信託銀行は、2重譲渡債権について、今のところ譲渡債権の権利者の確定をめぐり、振興銀行に対して、確認訴訟を提起していない様子だ。そのため、振興銀行は、SFCGの債権について、唯一譲渡通知を送付して、債務者対抗要件を具備し、事実上独り占めし、回収金を自分のものにして、いまやひとり勝ちという。(Zaiten,6月号、日本振興銀行が攻勢を掛ける破綻・SFCGの遺産争奪戦)

信託銀行は、何を躊躇って、譲渡通知に踏み切らないか。受託者は、譲渡通知を出したら、過払金返還責任がでることを恐れている。ただ最も恐れられる信託期間中の完済債権については、既に債権が消滅してしまっているので、新たな借り入れが無い限りは、譲渡通知が不要なので、もはや債務者に譲渡が知られることもなく、過払金問題が大きくなりはしない。
債務者からの債務整理の申立があって、も、SFCGが債権届出を受け続けてくれさえすればよい。SFCGの破産手続きが終了し、譲渡通知が終了までになければ、信託に対して請求する債務者はありえない。
他方、債務者側弁護士が譲渡のニュースを知り、債権者が誰だか登記から調べて、信託に対する譲渡を承諾させ、争う弁護士がでてくれば、完済債権であろうと否とにかかわらず、受託者は困ることにいなるが、そういう弁護士は今のところ現れていない。

信託銀行には、それ以外に、大きな不安がある。
信託銀行は、金融機関である以上、貸金業法の適用を受けず、どんな債権でもグレーゾーン金利を請求できない。
譲渡通知をだせば、いつ譲渡されたか知られてしまい、信託銀行はSFに回収委任して、超過金利を不当に徴収しつづけ、収受していた事実が弁護士に明らかとなる。
その上、銀行である以上、利息制限限法の適用金利を越えたグレーゾーン金利を請求できないというのは、振興銀行型の理解でよいのかどうか。すなわち、引き直し前の残高を譲渡債権として、譲り受け、その金額を基準にして、金利を利息制限法適用範囲(15~18%)に下げて請求すればすむのか。
それとも、グレーゾーン金利を請求できないという解釈が、金融機関だから元々契約であろうと超過金利を受け取ってはいけないのだから、譲渡の結果、その時点で、金利引き直し計算した金額しか、請求根拠をっもちえないか。これについては、裁判例がないから、弁護士らも半信半疑が続く。サービサー法での回収受託での権利・義務を考量して、参考にするか。

もし、金融機関は、譲渡債権については、もともと貸金業法の適用が受けられず、自分が当初から貸していたらそもそも超過金利を請求できていなかったという解釈になれば、譲り受けた債権は、請求前に、引き直しが強制しうる。裁判で、純粋な法的評価となるが、そのように認められるというのであれば。
金利引き直し計算したら、信託財産の元本総額は、3割以下になってしまう。
その上に過払金債務が生じるとなれば、信託財産はゼロになって終わったほうが、マイナス資産になって、受益者が受領した金銭に対する追及を受けるよりは、有利だという判断になる。

信託の過払い金責任を考えるとき、信託財産と受託者の2つに責任主体に分けて考える必要がある。
信託財産は、独自の財産体を形成し、法人格は認められないが、法主体性はあり、法律行為は、受託者によってなされる。あたかも、会社が成立し、会社財産が存在し、会社の法律行為は、会社の代表取締役によって、なされるアナロジーのように。
不当な利得があったのは、信託財産であり、信託契約にもとづく信託事務の業務執行者である受託者ではない。過払い金返金債務は、信託財産によって引き受けられる。
信託財産の持分は、複数の種類受益者によって共有されている。信託財産がゼロの価値になるとは、投資家の有する受益権の経済的価値がゼロになるという意味となる。信託財産について、受益者は、信託財産価値以上の責任を負うだろうか。旧信託法で構成され運用された信託であれば、受益者が信託財産を超える賠償責任を負うかは、旧信託法36条をどう解釈するかにかかってくる。それ以外に、個別には、不当利得の転得者としての返還責任が生じる恐れはある。信託財産に対する信託法の追及効(物権的請求のような概念とアナロジーされる)というのではない。、民703条で、実際に不当な利得したのは、誰かという要件論の事実評価の問題となる。

信託財産がゼロになっただけであれば、投資家の損失だけですむが、信託の受託者にとっては、受託者の管理失当責任が問われる事態となれば不当な判断となる。信託契約違反による管理失当ならともかく、受益者の利益のために、貸付債権の権利の帰属主体となっているという応諾的な事実だけで問われる受託者責任はないだろう。
しかし、信託財産を保有するという事実評価の視点を変えれば、そうした性格の債権を自らが(自らの利益のために)進んで受託したという受託行為に、注意義務責任(due diligence責任)、過失が問われる場合であり、それを請求原因として争いが起こりえることは否定できない。
さらに、信託が終了してしまっておれば、通常人の相当の注意をすれば、過払い金返還債務の発生が予期しうるにももかかわらず、それに配慮せず、危険予知も、予防もすることなくに、最終分配して信託を終了した責任があり、信託を認識する手立てがない債権者に対して、責任は免れないだけでなく、内部的にも管理失当となりうる。
過払金返金債務は直接的には、信託財産に対して生じるが、旧信託法36条なりで、受益者責任を追及できないときには、受託者に対して、賠償請求することが認められれば、あるいは受益者に分配する以前に、一旦は受託者が自分の名義で、不当な利得(超過金利による過払い金)を収受していたことは明らかであるので、直接の責任追及を受けうるだろう。
信託の第三者から見れば、信託財産だろうと受託者の固有財産だろうと、法律行為が受託者としてなされる以上、両者を区別しては考えることはできない。債権登記も受託者の名前であって、信託の存在を明らかに認識し、受託者の行為であるることは推認できない。第三者からみれば、責任は受託者に直接的に生じ、あとは、受託者の受益者に対する内部的な求償問題にすぎない。信託財産の管理者の受託者としてではなく、受託者本人が、前面に出てくる以上、共同責任として、あるいは連帯債務として考えるまでもない。

こうした受託者の責任が生じるのであれば、投資家(信託財産)を犠牲にしてでも、譲渡通知は出したくないだろう。また受託者の顧問弁護士は、受託者が受託の法律行為について依拠した法律意見を出しているでしょうから、受託者のリスク認識に同調されることになる。

こうして、債権譲渡の登記制度は、権利として優先順位を確定できるツールであると法が与え、違法譲渡の抑止力になっても、グレーゾーン金利適用を受ける貸金業債権については、実際の実践になったときに、まるで機能を果たせなかった制度だとわかる。
その結果、優先的な権利者は、長期間にわたって不当利得を収受していればいるほど、譲渡通知も出させず、振興銀行に対する訴訟もできな状況が作り出される。

こうして振興銀行はひとり勝ちし、回収は誰にも邪魔されないで、引き直し前の元本を確保して、利益を享受できる。このような状況により、振興銀行にとってみれば、2重譲渡の事実は、今のことろ発生していないといえる。
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日本振興銀行が、4月22日、SFCGの債権譲渡に2重譲渡があったことについて、債権預金者に対して、2度目の調査の報告をしている。そこで、債権譲渡の法律の運用と理解について、奇怪な説明を展開している。
www.shinkobank.co.jp/whatsnew/img/press090422.pdf
信じられないことに、銀行というのに、債権譲渡の法律を正しく理解していないようだ。
「信じられないことに」「目を疑いたくなるような」とは、同じ業務をするものであれば、相当の注意をすれば、起こりえないという意味を持っている。

債権譲渡の対外的権利関係は、譲渡登記それとも譲渡者による債務者への確定日付け譲渡通知か債務者の承諾で決せられる。SFCG管財人、競合すると見られるSFCGの債権者など第三者に対抗しようとすれば、いずれかの方法によらなければならない。
振興銀行は、公衆の閲覧できる預金者向けとみられる開示(預金者の皆様にと説明の最後にある)の説明において、譲渡の権利を確定するためには、登記及び債務者通知を要し、さらに通知ががなければ譲渡は完了しないと理解を示している。他に重複する譲渡の債権者があって、通知を出していなければ譲渡が完了しておらず、通知を出した譲受人がいれば、通知した者が優先的権利を確定するというのだ。
対外的効力と債務者への対抗が理解されていないようだ。債務者への譲渡者からの通知は、債務者に対して対抗できるにすぎず、直接回収できる正当な権利を取得したに過ぎない。

しかも本件で譲渡人は、債権譲渡について、内容証明郵便で譲渡通知を出していないし、債務者承諾もとっていないとみられるので、確定日ある通知または承諾を得ていない。したがって、対外的効力を生じさしむる譲渡を確定できていない。
振興銀行は、貸金業法24条の譲受人による譲渡通知をかねるため、葉書きで、譲渡者と連名による通知をしたとみられる。往復はがきを使えば、返信用に異議なき承諾をつけたかもしれない。
 
異議なき承諾の効果が、過払金の発生や超過金利支払い分についての元本充当による債権減額の異議(見なし弁済無効の意思表示)の抗弁を切断できるかどうかは、争いとなろう。しかし超過金利支払いが含まれることを知って譲渡をすける金融機関として、見なし弁済無効の意思を無効にするための異議なき承諾は、過払債権者の権利に対する故意の侵害であり、信義則上、許されるものではない。
 
対外的権利関係は、登記か確定日ある通知・承諾のいずれかの時間的先後順位で決定されるから、振興が登記で先順位でなければ、無権利者になるだけとなる。
信託譲渡は、すでに何年も前からなされており、譲渡登記は必ず行われ、監査法人が定期的かつ頻繁にローン監査として、登記確認作業をしているから、漏れはないとされる。ついでに2重譲渡のチェックもされる。 
振興は、預金者を欺く意思の有無にかかわらず、預金者に重大な誤解を与えるような開示をしていることになる。法の理解が正しいかを確認し、誤解にもとづく説明がないよう結果回避する予防責任を負っており、故意・過失があろうがなかろうが、単純な注意を欠いた不注意で、公衆が閲覧できるHPに貼ることは、違法開示があるといえる。
証券取引であれば、開示が虚偽表示にあたり、それを信じた投資家が損害を蒙れば、賠償責任が提起されうる。
もっとも、預金者は預金保険により保護されるので、預金者には損害の発生がないから、賠償請求を受けることがないが、保護の上限額を超える預金が保護されない場合には、その開示を信じた預金者に損害が生じれば、賠償責任の訴えを提起される。預金者には、その掲示に法律の理解に誤解があることを外部専門家に確認するような注意を求めるのは酷だろうから、不注意による過失を問えない。
 
開示には、売買債権者は、自分よりも登記の先日付の譲渡担保権者よりも優先するという説明もあるが、これも疑問が残るだろう。

重複譲渡の真の債権者が法廷で確定されるまで、債務者から回収した元利金は、不当利得となり、で真の債権者に返還すべき金銭となる。不当利得の返還には、悪意の受益者の主張を伴うゆえ、年5~6%のペナルティが求められることになる。
グレーゾーン金利債権の債権譲渡に伴う過払金処理をめぐる法的視点 -1
SFCGの破産手続きにおける債権譲渡、信託譲渡にみる解除権、過払金返還請求権、賠償請求権

以下争点・論点が整理がされておりません。メモ帳以上のものではありません。

SFCGの貸付金のうち、8割近くが信託譲渡、債権譲渡あるいは担保権が設定されている。

SFCGが引き受け負担義務がある過払金とは、債権譲渡で権利移転された債権から生じた及び生じる債権を含んでいるか。振興銀行に対する譲渡では、債務者通知が送付されており、信託譲渡債権では通知は出されておらず、SFCGに回収事務委託をして、信託譲渡は借り手により認識されていない状況にある。

既発生の過払金は、振興への譲渡では、契約解除で原状復帰する譲渡契約ゆえ、元本返済充当(引きなおし)請求があった債権では、SFCGに戻っているから、SFCGの過払債務として含まれる計算となる。

しかし、借り手から引きなおし請求がおきていない場合、他人の財産権を自己の裁量で引きなおして元本を減額したり、過払金認識することが認められない。不法行為による賠償請求を受けることになる。

確かに契約上、過払い金が発見されたら解除権行使されるから、振興にとって経済的に不利とはいえないようにみえる。

しかし譲渡成立後に譲渡者が引きなおし計算すれば、それにより購入債権額が変更されてしまうし、解除の効果として原状に復してしまっても、権利の再移転と代金引換の同時履行の抗弁をしないとすれば、その代価の返還請求は、破産債権となってしまう。まして過払い金の発生のない債権の引きなおしをすることは、権利侵害となるので、できない。

そうすると振興については、SFCG破産手続き開始決定時において、上記金額に既発生の過払債権が含まれることになる。将来について、契約上の解除権の行使が認められるかだが、形成権であるから、認められると考えられるが、解除しても、対価を受け取れないにすぎない。

 

他方、新生信託、日興信託、あおぞら信託、ORIX信託に証券化で譲渡された過払金はどう処理されているか。信託契約では、通常、過払金の発生が発見された時点で、信託契約を一部解除して、その債権を信託委託者に戻すとしている。

振興の債権譲渡契約と信託の譲渡契約の違いであるが、契約の解除権の行使がある点について、前者の場合の結果には疑念が生じない。解除されたら、振興は、譲渡後に借り手に支払い請求し、収受していた金銭があれば、譲渡がなかった法的状況に遡及的に戻す。確定的に過払金が発生していれば、借り手に返金し、残債務があれば、弁済は有効となるので、不当利得はSFCGか(2重譲渡されており、振興が権利者でなければ)債権者から返還請求されることになる。

信託譲渡では、解除権の行使ではないので原状には復帰しないし、遡及的に譲渡がなかったことにんするわけでもない。権利の再移転についての原因は(買戻し以外の場合には)、信託譲渡無効というわけでもなく、信託を解約して結果として戻されている。通常、信託譲渡者が信託財産の劣後持分を表象する受益権を有し続けるので、過払債権発生により戻される対価の給付として、劣後受益権の配当を減額して対応される。信託はそれまでに受領した金銭を不当利得として、戻すこともないので、それまで何年もの譲渡期間中に受領した過払い金は、保持したままとなる。実際には、受益者への配当で払いだしてしまって、すでに信託には存在していない。

ここで、信託から戻った過払い金債務であるが、SFCGの破産手続きでは一般債権となる。信託譲渡後、幾年たっても劣化資産のみが戻ってくる合意が成立している。SFCGは信託期間中、回収金を信託に送金しており、過払い金はすでに信託により受益されてしまっている。

資産だけが移転され、負債(責任)はSFCGに残る。管財人は、信託財産から生じる過払債務を引き受けるのであれば、実際に利得のあった受託者に対しての不当利得の返還請求はするのか。劣後受益権により、SFCG自らが過払い金を受益したと考えるのか。

 

過払金返還請求権の債権者は、債権譲渡があったからという理由から、債権と共に過払い金債権も移転したからという理由で、債権譲渡先(譲受人)に請求できるか。確かにローン債権は移転されている。しかし過払金債権とは、譲受人が原因のない不当な給付を誰かから得ており、借り手がその給付をすることで損害を受け、借り手の損害と譲受人の利得に因果関係がない限り、過払金返還請求の成立要件を満たさない。譲渡したからといって、債権の帰属と処分権が移っただけでは、不当利得があった事実はどこにもない。

また譲渡契約によって、貸し手の地位の承継、譲受人の債務引受がなければ、債務は譲渡される合意が形成されていない。

さらには、過払金の債権者は借り手であり、過払債務者は貸し手であって、ローン債権と過払い債権はふたつの別の請求原因により発生する債権であり、債権譲渡によって移転するのは、ローン債権である。過払い金債権を譲渡しようとすれば、債権者の申し出と譲受人の応諾が必要となるが、過払い金債権者には譲渡の意思表示がない。ローン債権者は過払金債務者であり、過払金債権を譲渡する権限は委任されていない。

グレーゾーン金利を含むローン債権は超過金利支払い清算が終わっていない債権であり、借り手の意思でいつでもネッティング(超過金利支払いの元本充当計算)できる性質をもつ債権となる。法律構成として悪いが、ローン債権は超過金利支払い元本充当権という随時相殺適状にある債権と類似した債権を内在化した債権債務混成債権であり、そのように債権債務不可分一体債権債務と法律構成できれば、過払金債権が債権譲渡に随伴して移転すると構成することができるかもしれない。こうして債権の帰属や処分権の有無だけによって、責任の所在を決定できない。

譲渡契約においても、過払金が含まれた債権譲渡は解除されるとの合意が成立している。

 

過払い金が発生した債権とは、そもそも譲渡時点で債権は消滅しており、債務が不存在であれば、債権譲渡は無効となり、有効に成立しなかったということになる。しかし、過払い金の成立の発見は譲渡時点では、予見不能な債権であり、譲渡時点で引きなおし請求が出ていなければ、貸金残高は存在することになり、無効とはいえなくなる。後発的事由によって、有効に成立した債権譲渡が当初から無効になるという法的不安定を作るわけにはいかないだろう。

譲渡後、1年、2年、数年経ってから、計算上、譲渡時に債権が消滅したことが判明するという法的に不安定な状況に置かれている。これは過払い金の発生を意思にかからせているから、そういう結果になる。時効の援用、2009年1月の判例の消滅時効の起算点も意思にかからせている。

意思表示がないときにも、計算上過払い金が法律上有効に発生したと解するとしたら、理論上直ちに法律上権利が生成され、法律関係は確定するが、事務上放置されているにすぎないことになる。そうであれば、そもそも債権が消滅している事実は譲渡時点で判明しており、債権譲渡は有効に成立しない。したがって、譲渡時に、すでに過払い金が発生しており、かつ譲渡後も原因のない請求と支払いが続けられ、不当に利得しつづける受益者の存在はありえないことになる。

 

売買の担保責任を考えるとき、過払金返還請求権の性格はともかく、譲渡時点から一定の期間に譲渡者の契約違反が見つかった場合には、具体的には、売買の対象債権が一定の性質を満たしていないとする内容相違による契約違反あるいは適格条件を満たさないとして、契約違反による解除権を行使するという合意は有効だろう。しかしそれが譲渡後も1年、2年、3年以上も経ってから、借り手の支払いが続けられ、それを受け取っており、そうした法的状況が作りだされていて、譲渡当初とは法的関係が変わってきた時点でも、契約違反による解除権の効力があるという合意なのか。単に、違反に関する帰責性を問わず、過払金請求があれば、解除できるという約定にすぎないか。解除する権限を認めるしても、譲渡者には、借り手の心的状況は読めず、いつ過払金が発言するか合理的な推定がまったくできないというとき、契約違反の責めを負うに十分な理由がない。

 

解除権の行使が不当であるとして認められないとして、信託においては、委託者破産において解約は不能となる。それでは過払金の債務者は誰になるのか。実際に不当利得を収受しておれば、返還義務があるだろうが、それがないとき、譲渡時にすでに過払金が発生していた場合には、譲渡者が過払い債務者となり、譲渡後に給付の利得が譲受人に発生しておれば、その返還だけを求めるに過ぎない。

 

破産するような信用状況にあるとき、だからこそ資金の捻出のため債権譲渡が使われやすいが、過払金の発生する債権だけを譲渡契約が有効に成立した事後的に除外して、そうでない債権だけを譲渡するという取引は、過払金債権者を含む一般債権者を害意する詐害行為ではないか。それを続けてしまえば、破産財団は、抜け殻だけのマイナス価値の資産だけを譲受先から引き継ぐことになる。

 

不当な利得を得ていない譲受人に対して、過払金返還を求めることは許されないが、過払金債権をSFCGに届け出た上で、請求原因の異なる不法行為による賠償請求を並存して求めることができる。振興は、金融業に携わるものとして、債権譲渡により、過払金債権者がSFCG破産により債権届出しても、ほとんど分配を得られないことを合理的に予見できたにもかかわらず、そうした損害発生を回避しようとする注意も予防行為もとることなく、自己の利益をはかることに邁進した。結果を引き起こしたと合理的に推論できる権利侵害行為があり、賠償責任を負うとすれば、過払債権者は、過払い金相当額jについて救済されることができる。ただしSFCGとの共同不法行為責任を立てることになると、SFCGとの客観的共同の有無の争いは、困難なく認められるにしても、資力がない管財人を共同訴訟に引き込んで、連帯責任としたところで、得策ではないだろう。

 

4月21日発表の過払金に、

信託保有債権分は、入っているのか

振興保有債権分は、入っているのか

SFCGに完済債権の現・残高ゼロ口座の過払いは、計算したのか。

信託財産として信託期間中に完済債権の現・残高ゼロ口座の過払いは、計算したのか。

 

負債3380億円、過払金総額2100億円
10月末の開示から、
総資産 6500億円
貸付金 5500億円
証券化含む担保設定額4300億円
その後、振興銀行に1100億円で、2重譲渡が700億円
破産手続きゆえ、担保は別除権となり、手続き外処理となる。
破産財団が有する貸付資産をネットすると、
5500-4300-(1100-700)=800億円

 

補足

振興銀行は、譲渡契約解除して、債権を戻すという。一体いくらで戻すか。

信託契約では、引きなおし前元本額で精算される。すなわち譲渡人は、過払金の発生ですでに消滅した債権を引き取り、引き直し前元本額を対価として支払う。

振興がいくらで1万件ものローン債権の譲渡をしたかは不明である。仮に引き直し前残高の50%(1100億円x50%)割引で購入したとしよう。個々のローンに売買価格をつけて、積み上げ計算して全体の売買価額を計算したのではなく、1万件をひと固まりとして全体として、いくらという価値を支払ったと考えられる。

過払金が発生して、解除して戻すとき、一体、対価はいくらか。

この価値は解除によって同時履行されず、原状復帰していない債権となるが、破産手続きで、不当利得返還請求権として、一体いくらで債権届出されるのか。

管財人は、引き直し前100%で買う義務はないにしろ、この場合、債務が消滅した債権に、個々のローンも50%の価格を推定しうるか。ただ売買時点では、債務は消滅しておらず、債権が存在した。

それらを解決しないで、債権届出することができない。

 

さらに、2重譲渡があるので、振興が登記について時間的劣位にあるとして、無権利となったときの問題は、手続き上の問題ではなく、振興が得た不当利得は、真の債権者に対して返還されるだけである。

しかし詐欺譲渡により、権利を喪失した賠償請求の金額は、700億円というのではなく、売買価額の按分額と査定されるのか。

 

信託については、債権譲渡が2000年以前からなされた債権があるとみられる。譲渡登記だけで、借り手は譲渡者から債権譲渡の通知をうけていなかったから、借り手にとって、過払い金は回収事務受託者であるSFCGに対して払われたことになる。しかし回収金は信託に送金され、信託を通じて投資家に分配されてしまった。信託事務受託者が受託銀行である。したがって、不当利得を得た第一受益者は、信託ということになる。

SFCG破産で、過払債権が信託譲渡者に戻されたとして、SFCGの一般債権者として届け出て、公平な分配といえるのか。というだけでなく、不当利得の損害を受けたものは、利得した受益者に対して、返還請求を求めることができる権利が不当利得返還請求権ではないか。直接支払いを受けたものが利得を得ていないということになれば、信託が利得した要件事実を証明できれば、実体上の対内関係に突っ込んで、追及する権利まで排除されることはなかろう。

 

それも容易な証明でなないとすれば、過払金をSFCGに残し、引き直しされていない債権だけが信託譲渡という契約により、過払金債権者は、SFCG破産により、権利を害されることになれば、信託事務受託者に対して賠償請求を求めることはできるか。

 

信託は貸金債権を譲り受けながら、譲受人である受託者は、貸金業法24条が求める直ちにすべき借り手への通知を故意に怠ってきた。そして信託譲渡者に従前どおり、回収委託をして、借り手には譲渡がないような外観を装い続けた。その理由は、27%のグレーゾーン金利を継続してとり続けられるからとみられる。通知をだし、直接回収するとなれば、銀行である以上、利息制限法に金利を下げるのが通常だろう。(振興銀行も譲渡通知により金利を15%に下げている。)

権利の主体だけ変更登記したうえで、27%そのままの違法に経済的利益を収受した。なぜ法違反を続けていたかは、それ以外に理由は考えられない。相手が証明することだが。

したがって、故意に貸金業法義務違反を続け、信託は不当に利得し続けたのである。そして過払い金が発生したら、遡及効を伴わずに、利得を返還することなく、譲渡者に抜け殻だけ戻して責任を負わせている。SFCG破産手続きで、過払債権者は、公平を欠いて扱われる。過払金返還請求は、SFCGの破産財団だけを引き当て原資に限られた配当額だけしかえられず、権利を侵害される結果となる。そうした状況は当初から予見しうる範囲であるが、結果回避行動は受託者により何もとられていなかった。過払い金はSFCGに届け出るとして、過払い金相当額を信託に対しても、賠償請求をすることはできるだろう。

日本振興銀行への債権譲受後、譲受人である日本振興銀行が借り手に譲渡された既存の債務の借換のためのローンを供与し、譲受債権を金利引き直し前の残高で消滅させて発生する過払い金をめぐる問題

SFCGから振興銀行に貸金債権が譲渡された。
譲渡された債権の債務者が、譲受銀行からの勧誘で、超過金利の元本充当による引き直し計算前の残高の借換ローンを得たとする。

銀行のインセンティブは、貸付債権を自行のローンに変えることで、引き直し前の債権額を確定することができることにある。銀行ローンは引き直し計算請求される対象ではない。

自行のローンによる借換は、銀行に譲渡されたローンの返済原資となる。すなわち、銀行は、自らが購入した貸金債権を完済させるために貸しつけ、金利ひきなおしリスクを無くし、そしてSFCGに払った譲渡代金を回収することができる。割引価格での譲渡であれば、利益を確定できる。既存ローンの返済は、引き直し前の金額となる。
しかしそれだと重大な事業上の危険を発生させてしまった。

疑問点  
①バランスシート上、購入した貸金債権は完済により消滅し、新たに同じ債務者向けローンが認識される。貸金債権譲渡を割り引いて購入していたとき、たとえば5割引きで購入していれば、バランスシート上、引き直し前の貸金債権残高x50%が引当金として計上されていただろう。これはどこに行くか。繰り戻され利益となるのか、債権が消滅したというのに、そのまま引当金として認識されたままが許されるか。

侵した危険
②引き直し前金額について、債権が完済されたわけだから、銀行は、確定的に過払い金を収受した。銀行が、債務者の損害発生を招きつつ、原因のない不当利得を収受した事実は明らかである。ここで過払い金債権者の銀行に対する不当利得返還請求権が成立する。銀行は、借り手が自らの意思で借り入れ、それを使って自由な意思で返済したのであって、任意弁済(債務確認行為)があったとの主張は認められないだろう。
借換ローンの金額は確定され、将来にわたり減額請求の恐れはないが、譲り受けた債権について、完済があったことで、過払い金返還債務を負うことになる。

ここで①の問題が出てくる。ローン金額を確定することで、引当金を利益認識してしまったあとで、過払い金請求を受けたとき、損失を埋め合わせる引当金がなくなる。そこで、完済した債権と同様に、そのための引当金をつむ必要があるだろう。

複数発生する過払い債権
さらに、ここで、ひとつの債権から、債権譲渡の結果、過払い金返還請求権が利得した当事者により、複数生じることがわかる。譲渡前にすでに、過払い金が発生していた場合に、後日、計算の上、過払い金債権者は、SFCGが収受していた不当利得金については、SFCGに請求することになる。
完済により、みなし弁済無効が遡及的に効果を生じるので、振興銀行が不当利得した金額から、SFCGが上と前にすでに受領していた金額を控除した金額を、振興に請求できることになる。
債権譲渡により、便宜上、不当利得を共同行為とみなし、連帯債務を請求することが許されるのであれば、銀行だけに全額の過払い金を請求し、その後の問題は、もうひとりの過払い債務者である債権譲渡者SFCGとの内部求償とされることができるか。
それが認められれば、過払い債権者は、SFCG破産で一般債権者として届け出て、分配を待つ必要がない。全額を銀行に請求できる。そして銀行が、結果的に、過払い債権者に代わって、一般債権者として、届け出て、分配されることになる。
実際に、SFCGが破産により手続きを終了してしまった場合、SFCGに請求可能な過払い金は消滅してしまうのか。
借り手にとって、過払い金が2本に分かれたのは、債権譲渡の結果であり、自分に帰責があるわけではない。譲渡債権の完済は、譲受人が引き直し前の債権額を確定したいがため、譲受人の借換ローンによりもたらされた結果である。引き直し義務の恐れのある債権を譲り受けたものとして、借り手に対する責任として、過払い債権者に対して、過払い債権の一本化は正当化できるか。
共同責任の賠償請求としないで、過払い金として銀行にだけ請求するために、どのような法理適用がありうるだろうか。過払い債権が債権譲渡と共に譲受人に移転していると構成できなければ、過払い金は別々に発生してしまう。

③もしSFCGからの譲受が、2重譲渡であれば、さらに問題が大きい。ローンは確定される一方で、振興銀行の貸した金で、SFCGからの譲受債権は消滅した。しかし真の債権者が信託銀行であったら、信託銀行の債権が振興銀行のローンで消滅されたことになる。
振興銀行は債務消滅直後までの譲受期間中に受領しつづけた回収金については、真の債権者に不当利得として引き渡す義務が生じる。借換によって得た資金で完済された弁済金を含めて、信託に移転されることになる。そして、信託が不当利得を食んだことが明らかになる。
しかしそれを仕組んだ結果になったのは、振興銀行のローンであり、振興が債権を消滅する目的で貸した行為があって、信託に損害が発生したことになるから、賠償責任を問われる恐れもある。

④担保権の抹消
振興銀行は、債権譲渡について、担保権や保証が譲渡に随伴ていないような説明がなされているという。債権譲渡で、理論上、随伴する権利を譲受人が放棄したとも考えづらいが、実体関係は見えない。
その状況で、引き直し金額前の金額で借換ローンが組まれ、譲渡された債権が借換ローン代金で完済され、消滅する。借り手は担保権の抹消を申し出るが、誰に登記がされているか。
貸付金のうち、7割が信託譲渡されているとして、振興銀行への譲渡が2重譲渡だった場合に、消滅した債権の担保権者の名義が信託銀行となっている場合に、信託銀行は抹消を同意できない。
700億円が2重譲渡されているという情報が確かであれば、権利関係をめぐり振興銀行は信託銀行と争うことになる。登記では時間的に後順位となる振興銀行は、訴訟で決着するまで、借換ローンによる弁済を含め他人の財産からの回収金を引き渡すことはない。そうすると、真の債権者でありながら、法廷で権利が確定されるまで、完済された代金の返還を強制できない信託銀行は、抹消には協力できなくなってしまう。
信託銀行に債権譲渡がなされたが、譲渡時点で信託銀行には移転登記がなされず、SFCGに担保権行使まで留保されている場合に、当該債権に2重の債権譲渡があれば、振興銀行に移転登記することは許されない。このとき、SFCGは他人の利益のために、担保権の名義を有しているにすぎず、債務者からの抹消申し出に対して、応諾する権利はない。

ここで明らかなのは、2重譲渡の後順位だからこそ、債権譲渡では、担保権が随伴できない。後順位の譲受人が債権譲渡により移転登記をしようとすれば、後順位の譲受人は、先順位の登記を(登記留保だろうと)確認しなければならなくなってしまい、既に譲渡があった事実を知ることになる。だから登記をそのままにして、債権譲渡したということか。
その上、証券化では債務者通知を送付しないので、信託銀行が訴により権利確認をしな限り、振興銀行は債務者との関係を排他的に独占できる。
他方、真の債権者でなかろうと譲渡通知がなされている以上、債務者の弁済は有効であり、債務者免責される。債権譲渡は、債務者の権利関係まで害することが認められるわけではない。
信託銀行は、2重譲渡があった債権については、振興が債務者対抗要件を具備し、直接回収をしている以上、弁済を受けられていない。
債務者は、担保権抹消しようとしたとき、信託銀行から譲渡請求を受けることになり、そこで2重譲渡が判明し、振興銀行と争うのか。

なぜ振興銀行は、担保権の移転登記をしなかったのだろうか。なぜ担保権者の地位を放棄するような説明をしていたのだろうか。
2重譲渡の事実を知っていれば、担保権が移転登記できない理由の説明はつく。すでに他人に登記されていることを知ってしまえば、債権譲渡じたいができなくなってしまう。担保権の状態の調査義務を怠ったのはのは、故意であり、その事実から詐欺譲渡の共謀や加担があったと推定されることにはならないか。
レタスの破産手続き事例は、参考になるか。

レタス破産では従来の貸金業者の破綻手続きとはきわめて異質な扱いになっている。
もっとも破産手続きなので、クレディア、アエルなどそれ以外は、破産手続きではなく、民事再生手続きであった。
その点で、今回のSFCG破産には参考になりうる。レタスには、債権譲渡もあったし。
①初めて引き直し計算するというケースであること。(破産だからか?)
②異時廃止の恐れがあること

引き直し計算するから、配当原資となる財団資産がなくなり、配当不能になり、手続き廃止する強い懸念があると明白にしている。

レタスは、かつては40億円ほど証券化もあったが、06年当時に150億円、破産時、資産100億円に満たない貸金業者であり、上場しており、負債3500億円のSFCGとは比べられないし、破産手続きだからといって、同じ処理がなされるかはわからない。

もし同じ処理となれば、問題点が残る。
①一斉引き直し計算するというが、すべての債権ではない。
レタスの場合には、一部が債権譲渡されており、債務者に通知のなかったゆえ、そのままレタスが回収していた債権では、債務者が譲渡をレタスが破産するまで認識していなかった。
譲渡債権については、引き直しがされないで、譲受人のところでやりなさいと説明している。

SFCGについても引き直し計算すれば、当然に配当が期待できず、手続き廃止決定される恐れがある。
同じ方法であれば、以下の問題が生じる、

②会計上保有する5500億円の貸金のうち、4300億円が債権譲渡され、債務者通知がなされていないが、それ以外に振興に1100億円の譲渡があり、2重譲渡となっている。
同じように引き直し計算されることになれば、SFCGが権利者となる保有する債権額は、あるのか無いのか、不明である。

③それ以外については、譲渡先において、計算してもらうようにと助言されているにとどまる。
ということは、譲渡債権については、みなし弁済無効の意思表示をしない限りは、銀行は、自動的には引きなおしてくれないということになるか。

④レタスでは、譲渡債権についいてさえ、手続き廃止してしまうから、譲渡前にすでに利得していた事実があっても、過払い金責任を負わないとしている。負ったとしても、配当がでないのだから、意味がない。
そこで、直接、譲受人に申したてよという。

レタス管財人の説明によれば、信託銀行だろうと、他担保権行使の譲受債権者も、すでに譲渡前に、譲渡者が受け取っていた過払金について、責任を負わないとしているので、譲受人が、債務引受責任を負うと説明しているようなものだが、管財人の説明は、過払い金を収受していない場合の譲受人に対する過払い金請求の正当性とは関係がない。
譲渡債権に生じる過払い金は、譲渡先に請求くださいというにすぎず、別途不当利得返還の訴訟することになり、譲受銀行が争う意思を表明すれば、長きにわたり、法廷で争うことになる。
彼らは、原因なき利得を受けておらず、責任を負わせられる理由がないと主張することは、明らかだろう。債権譲渡行為だけで利得を得たとはいいがたい。請求して何がしかの受益があってこそ、不当利得返還の紛争になる。

⑤もう一点、レタスでは譲受人が回収事務を別の回収受託者に委託していること。これは今回も信託銀行では、信託銀行が直接回収することはないので、別の回収事務会社からの通知が来ることになる。
信託銀行は、譲渡後の取引履歴は保管しているが、譲渡を受ける前は履歴はない。

不当利得返還請求権事件としては、その原因となるローンの債権譲渡を伴うケースとして、重大な矛盾を表面化する問題になる。

破産手続きが、担保権については、別除を認め、担保権者の権利行使を前提とする以上、また清算ということから、引き直し計算されるだろうが、信託財産も振興銀行も、破産手続きにないので、みなし弁済の意思表示のない引き直し計算は、する法律上の義務がないからしない。

 

債権譲渡後、無期限の解除権行使つき譲渡契約の法的性質とその目的

 

共同不法行為責任を問うとして、主観的共謀はないものの....
客観的共同で事足りるが、他方、譲受人の共謀の証明する事実を探すことは困難だろう。

それでは、以下のような取引を工作したらどうか。
①譲渡人は、第三者の新設会社に、過払い金の発生しない債権だけを全部譲渡する。
(過払い金が発生したら契約解除する権利を設けることで法律上可能となる。)
②新設会社は譲渡代金の資金調達には困らない会社とする。
③抜け殻だけを保有する譲渡会社は、過払金債務だけが残り、そこで過払金債務を免責されるため破産申請する。
譲渡代金によるが、引き直し前の50%の割引で譲渡すれば、それに加えて、過払債務が残るので、譲渡会社の資産は劣化し、破産を免れ得ないだろう。

こうした工作が許されるだろうか。
新設会社の代わりに銀行が入ったらどうか。
明らかに債権者を切捨てて害意するために、債権譲渡の法理が悪用されたにすぎない。
新設会社と抜け殻会社に客観的共同が認められれば、不法行為で、切り捨てられた損害を、新設会社に請求すればいい。
要件は満たすから、申立は却下されない。
新設会社は目的がひとつなので、譲渡無効にするなり(破産法詐害行為)、一体的(連帯)責任を負わせる共同不法行為の法理の適用は、検討できるだろう。

しかし、不当に廉価な売買価格であれば、破産法詐害行為はありえるが、他方、譲受人は譲渡者の破産を合理的に予見することができず、また優良資産だけの譲渡取引が債務超過を招くことになると予測できないとき、従って過払い金がカットされることは予測できる結果ではなかったとして、権利侵害の害意、故意・過失もなかったと争ってきたら、勝てる見込みがあるか。
妥当な譲渡価格であれば、詐害行為にあたらないか。取引全体を考えれば、譲渡時点では潜伏していたが、譲渡後になって発現する過払金債権を引き受けないとする行為は、債務超過において、債権者を害する詐害行為の要件を満たすのではないか。

事実上、消された過払金債権者の救済として、譲渡者に対して不当利得返還請求が要件を満たさず成立しない場合には、不法行為による賠償請求によるほか(709条か7198条かは別にして)、救済の手立てはないだろう。
こうした取引を許せば、実際に銀行による融資をコミットさせた新設会社を設けかねない金融状況であり、新設会社に債務の付着しない優良債権だけを移転させ、過払債務と一般債権者を害する工作を認める取引の法解釈に違法性がないとされてよろしいか。

 
 

債権譲渡により事実上消滅させられる過払金債権

通常、一件の借入しかない場合には、債権譲渡で過払金が発生していても、大きな障害にはならない。
しかし債権が複数ある場合には、状況は異なってくる。複数の債権とは、金利や満期の異なる債権というだけの意味ではない。契約の要素が違う場合であり、担保付、無担保、連帯保証人付きか否か、違いなどの場合を検討する。
たとえば保証人つき債権Aは、引き直し前100万円が残高があるが、過払金を超過金利払いを元本充当すれば、過払金200万円生じるとする。担保付債権Bは、引き直し計算前200万円、引き直しても100万円の残高がある。
両者は共に、譲渡された。債権譲渡の通知を受け、それを契機として、程なくして、みなし弁済無効を主張して、引き直し計算した。債権Aは、過払金が発生したので、譲渡債権は譲渡前にすでに消滅していたことになり、譲渡無効かさもなくは譲受人は有効に成立した債権譲渡契約を解除した。引き直し後の債権Bの 50万円だけ、債務が残ることになる。

仮に譲渡前に充当計算して譲渡されたらどうなっていただろうか。2件のローンは合算して一括清算されたら、過払金が100万円(200-100)生じたはずである。しかし債権譲渡により、過払金債権は譲渡無効あるいは解除により、譲渡者に残り、残債務がある債権だけが有効に移転される。

過払金債権が内在した債権では、過払金債権とローン債務が随時相殺(法律構成としては相殺ではないが類似する減額請求権が留保されたローン債権)されていないので、債権譲渡が、こうした異なった結果を招くことになる。過払金債権は、譲渡者が破産すれば、債権届出して配当に与るしかない。

債権の譲受人は、金融期間であれば、こうした結果が起こることを合理的に予見できる能力があり、過払金債権者の権利を侵害する結果を回避する注意義務を怠ったというより、故意に損害を与える結果となった。債権譲渡に両当事者に共謀がなくても、客観的共同があり、ふたりの行為があわさって、過払金を減額させる損害が引き起こされたので、共同不法行為により連帯責任を負うと考えられるか。

債権譲渡により、こうした認めがたい状況の発生が予期できるのであれば、譲渡者と譲受人は、譲渡にあたり、事前に引きなおし計算すべき注意義務を負うと考える。少なくとも引き直しなく譲渡されることで承諾されるかの確認を要しよう。なぜなら、過払金債権者は借り手であり、その回収を著しく困難かつ不可能にする債権侵害の結果を招く譲渡を応諾するかどうかの意思を確認すべき注意義務が怠ってはならないと考える。

共同不法行為法理適用は、譲渡者に対して、過払金返還請求できない状況にあり、損害賠償に転化し、並存して請求するというにすぎない。管財人を必要的共同訴訟に引き込むことが利口でないとしたら、実際に譲渡人が破産していれば信用力がないのだから、不法行為でも経済的には同じ結果になる。

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複雑なSFCG債権
追加で融資受けた債務者も多いと思う!たとえば、
一回目200万5年で完済。(その債権は現状存在をしていない)
二回目250万5年経過(残高250万だが、50万の過払い発生)
三回目250万3年経過(残高250万、引き直しても100万の残あり)
この様な場合、SFが健在であれば全てを一連で引き直して不存在を訴えられる。
しかし、現状破産手続きとなれば一回目は当然過払いあるが戻る見込みなし。
二回目は振興に譲渡されていて50万の主張すればSFに戻される。三回目は債務が
消滅するまで振興に払うとしても過払い分の返還は見込めないとなれば、一連で
引き直し、振興に不存在を訴えて支払いを止められないものか?
(注 一回目は元利均等 二回目三回目は期限付き利息のみ)

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過払債権が移転される法律構成を考察してみる。
①過払債権の債権者が借主でと元のローンの債権者がSFCGゆえ、請求原因を異にし、過払債権を借主が銀行に譲渡し、応諾されていなければ、法構造上、移転の事実は証明できない。
②またSFCGと銀行の契約が、地位の譲渡、債務引受を随伴する契約でない限り、過払い金の移転を証明できない。
したがってローン債権だけが譲渡されたことになる。
ここで奇妙な話になってくる。
譲渡されない場合には、借入債務と過払債権は分離不能な不可分一体の債権として処理される。過払金が発生したり、新たな借入に充当され、消滅したりして、発生・消滅を繰り返しうると認識されて引きなおし計算されるのが実務慣行である。

債権とは、借り手には影響を与えず、債権をそのまま譲渡することことであるが、①説に従えば、過払債権が付着しているから、一方が移転されることで債権と債務が分離されてしまう結果となる。こうした法的不整合な結末は、譲渡者と譲受者が相当の注意をすれば、認識しえたことであり、むしろ双方が金融のプロである以上、当然にそのように認識して、そうした結末を意図して、取引がなされたと考えるのが、妥当である。たまたまの不注意、過失であるとはいえない。

①説法律構造をとったときには、全体がひとつの取引から生まれた債権債務関係であり、過払債権が派生的な性格の債権とすれば、譲渡がなかった場合と比べ、不当かつ権衡を欠く結果をもたらす。しかし債務者の立場では、現状の法律構成では、過払金の移転を伴わない債権だけの譲渡無効を主張できない。
②説は、銀行とSFCGの契約に、銀行から明白に地位承継の拒絶がある以上、当事者の意思を無視し、債務引受、地位譲渡を推論することは、認められない。

さらに事実関係を考察してみる。
上記分析は、1本目のローンの完済があったのが、今から10年以前で、2本目のローン実行とは、数ヶ月の間がある場合と考えられる。もし10年以内に債権が消滅しておれば、1本目と2本目は継続した一連の取引とみなされ、過払金と貸付金が計算上充当され、現時点の残高が計算される。
もし2本目の債権譲渡は、引きなおし計算請求により、譲渡時に遡り、残高がゼロだったことになり、過払金は不当利得を得たものに対して、請求することになる。

そこで、③説として、債権債務が混然と一体化する性質の債権であるので、譲渡時点で、債権債務関係を全てを清算して、譲渡される義務があったと構成はできないか。この場合、過払債権による自動相殺という新たな権利を借り手に認めることになる。すなわち、譲渡時点で、譲渡を知らされていたら 過払金債債権と借入務を相殺する(金利引きなおし計算の)意思表示をしたのであって、その権利を侵害されたとする。
しかし権利侵害の損害賠償が破産会社に向かうのでは、法的救済がはかられても、実際の補償がえらえない。となれば、そうした状況は相当の注意をすれば合理的に予測できたにも関わらず、金融機関でありながら、注意を欠き予防しなかった義務違反により、過払相殺分の減額請求を求めたらどうか。
譲渡の取引から、主観的共謀の事実を証明できなくても、客観的共同があれば、裁判所がそれを認め、連帯的債務として扱われることが望ましい。裁判で、証拠として譲渡契約の提出を求め、実体分析が必要となる。

 


債権譲渡とは、ある契約にもとづく原因から生じる債権を譲渡すること
債権譲渡 民467条の成立要件requirements 1 は, 債権が存在しなければ、譲渡できる。債権が存在すること。
売主は、表明保証representations and warrantiesをして、①有効かつ正当に発生し、②現在なお存在し、消滅していないと証明する。
存在していない債権は、したがって譲渡できない。
買ったほうは、あったと勘違い(誤解)させられて買ったことになり、無効になる。
ただ引き直し計算すれば過払金の発生する債権が消滅した債権であることを知って買ったわけだから、債権がなければ、譲渡することができないに過ぎない。
 
成立要件(訴訟になったら、裁判で証明する。請求者と被請求者はどれかの要件の成立で、逆の主張にする。)
①不法な原因(詐欺、賭博、売春など公序に反する場合ほか)によらず、債権が合法的に正当に発生している。(発生原因の証明)
②消滅とは、金銭債権では、通常、弁済、代物弁済、相殺などにより、消滅するが、そうした事実がないことの証明。
③債権者が譲渡の申し出をし、譲受人が譲渡の応諾をする。
 
④ 効果のひとつとして、債権譲渡は、債権者と譲受人の合意で成立する。債務者(借り手)の合意あるいは同意は不要であるが、債権はそのまま譲渡されるだけで、債務者に影響を与えてはならない。
債務者に通知があれば、ただ債務者に譲渡の事実を対抗できるにすぎない。すなわち、直接譲受人が借り手から回収できる。譲渡登記や確定日付き譲渡通知を譲渡者(権利喪失者)が債務者に送付した場合あるいは債務者の承諾ある場合には、対外的に権利関係が確定し、譲受人は譲渡人の債権者他、誰にも権利を対抗できる。
 
ここで、過払金債権とは、一般の債権である。過払金返還請求権者は借り手であり、過払金返還義務者は貸し手である。ししたがって、過払債権の譲渡があったとすれば、要件事実が成立していたことの証明が必要となる。債権者が譲渡の申し出をして、譲受人から応諾者があった譲渡契約が成立していたか。過払債権の譲渡が有効に成立したかどうかを争うという状況では、当然その点が争いになる。過払債権の譲渡があったと主張する側が、証明責任を負い、抗弁する側は、譲渡の事実がなかったという事実を提示する。
さらにここで、過払債権は、過払債務者が、過払債権者に合意を取らず内密に譲受人(債務引受人)に譲渡できるものではないし、そういう譲渡は要件を満たさず成立しない。それでは過払債務者は、過払債権者から、譲渡行為について、法律行為を代理する委任を得ていたか。否 
 
過払債権者は、したがって、自分の有する貸し手に対する不当利得返還請求権を譲渡しただろうか。否。
 
こうして債権が譲渡されたからといって、ローン債権者の債務までもが同時には譲渡されない。また譲受人には債務引受の意思を表示したわけでもないから、表示意思とは異なるから、当事者の意に反して権利が成立しまったことになる矛盾が生じる。また債務承継契約でも、買収などのような貸し手の地位の承継(貸し手の立場が置き換わる)を伴う取引でもない。
 
ここで奇妙な話に浮き上がってくる。
過払債権者が譲渡する対象物としての債権が、譲受人に譲渡される前に既に発生していなければならないのは当然であるが、過払債権は、借り手が自らの損失を負担することで、貸し手が受益を受けたという権利状態がすでに発生しているという点である。
つまり、借り手と譲受人との間で過払債権が発生しているというのではなく、貸し手との間で過払債権が発生しているという事実があり、債権譲渡に伴い、過払債権も移転するという法律構成をとりたいという意味での請求である。
 
 
論点2
 
過払金返還請求権とは、不当利得返還請求権を意味し、その成立要件4つを、民703条が規定する。
①Aに受益があった
②Bに損害が発生した
③Aの利得は、原因なき(受益する正当な理由がない)受益だった。
④AとBには因果関係がある。
 
単純なケースとして、
Bは(AとBとの間のローン債権があると信じて、あるいは信じさせられて、実は債権は消滅していたが)Aに支払いをした。
4つの要件を満たす。Bに発生した損失について(請求側の直接事実の証明責任)、Aがそれにより受益を受けたこと(請求側の直接事実の証明責任)、その支払いには理由がなかった(請求側の直接事実の証明責任)。
保証人の場合に保証行為の履行があって、損害が発生しても、わかりやすい。
 
振興銀行にはどういう意味で受益したhas obtained 事実があるのか。これから請求できる権利というのではだめ。
Aに利得があったか、なかったかから始まり、それが法律上の原因なき、不当かどうかが争点(互いが見解相違で争う)になる。
振興銀行は、債権譲渡が成立する前に、借り手との契約関係が存在しておらず、借り手の損害において、なんら不当な利得を得ていなかった。
 
 
ここで、過払債権が移転によって移ったという主張しかできなくなる。しかし、論点1から、債権譲渡の対象がローン債権から発生する権利であり、請求原因を異にする過払債権ではなく、それが譲渡に随伴したり、譲渡に含まれるわけではない。
 
トライトでは、地位の譲渡が認められたケースで、取引が買収の性質を帯びていたか地位の承継、債務の引き受けの応諾を契約上でしていたと認められた。

論点3
 
譲り受けた債権が、譲渡前に弁済があったことが譲渡後に判明し、譲渡時には、遡及的に債権が消滅し、存在していなかった債権譲渡の効力
 
債権譲渡の要件を議論しているが、これはそういう問題ではなさそうである。
譲渡契約成立時に、債権は存在したかしなかったのか。存在したのであれば、その要件は満たされ、議論の余地はない。
譲渡契約成立時点では、借り手がみなし弁済無効の主張をしていなければ、債権は有効に存在するという性質の債権なのか、それとも借り手の意思表示にかかわらず、引き直し計算すれば、理由のない弁済になるだけなので、債権は存在していなかったといえるか。
意思表示必要説は、時効の援用の起算日判例から、意思表示がなければ、みなし弁済が無効にされる理由がなさそうである。債権残高は援用があってから、遡及的に変更されるかに解される。
意思表示不要説は、ありえるだろうか。地方自治体の税金や国保など健康保険の未払い金の回収のため、債権者による代位権行使が可能な債権で、借り手の意思表示を待たずして、すでに権利関係(過払い金の発生)が成立していると考えられるか。この場合は、借り手が支払不能、債務超過にあって、経済的行為に関しては、意思表示不能な状況におかれており、債権者が借り手の地位に代位したと考えれば、訴えを提起した時点で、意思表示の推定が働くとも考えられる。
 
そのように考えられれば、債権は譲渡時に確かに存在しており、譲渡者はその事実を契約上表明保証し、買い手は、それを確認した。注意義務として、数千を超える小額の債権譲渡では、借り手まで任意弁済でしたかと確認する作業が求められるものではないだろう。
 
そうすると、譲渡者も譲受者にも落ち度がなかっし、騙そうとする悪意もなかった。経済取引には、故意や過失がなかったとし、債権譲渡はこの段階で、有効に成立し、効力を生じ、権利の移転(必要であれば登記や対抗要件具備行為)と代金の支払いが遅滞なく行われ、譲渡が完了した。
 
それを後になって、債権が実は遡及的に存在していないことになってしまったというとき、譲受人は、いったん有効に成立した法律関係について、譲渡の無効を主張しうるか。買い手は債権がいつ何時、借り手の意思表示で、債権額が変動する恐れのある性質をもった債権であることを認識して購入しており、譲渡者もそれを認識して、価格を決定して譲渡した。
したがって、譲渡契約の意思形成過程において、なんら瑕疵は見当たらず、無効原因はない。
 
そこで、予想しうる所定の後発的事象が起こった場合に、譲受人が契約を解除しようという解除権行使の契約上の合意の効力を範囲が問題になりうる。不当な行使であるか否か。
しかし解除の結果は、単に遡及的に存在していなかった事実を追認するだけのことであり、買い手はその損害の危険発生を引き受けていたに過ぎない。解除権が原状に復帰させ、取引がなかった状況にもどす効果をもたらとはいえ、相手に譲渡代金の返還請求を求める権利があるだろうか。買い手は譲渡時、債権額が借り手の意思により一部あるいは全部減額される恐れのある性質の債権であることを認識し、注意して、譲り受けたのであるから、譲渡者に対して、原状復帰の効果として返還請求や損害賠償まで求めることは、不当であろう。
特に、譲渡時点から借り手に数回の支払いがあったあとであれば、なおさらだろう。
 
また引き直し計算で元本の一部が減額されただけで、過払い金が発生していない場合には、特に定めがない限り、そのリスクを譲受人が負担することになるので、そのアナロジーで考えれば、過払い金発生の時だけ、譲渡無効と同様に、代金を返せというのは、解除の権利濫用ではないか。ただ譲渡後3ヶ月以内について、引き直し計算があった場合に減額された金額を補償するという譲渡者特約があれば、それは有効だろうが、譲渡後1年まで、借り手が12回の支払いを履行した後までも補償する経済行為が合理的かどうか(他に何か意図がないか)ありえるのか、疑問が残る。
 
そうすると、譲受人の解除権行使で債権が譲渡者に戻された場合の代金返金が発生しないとすれば、SFCGの債権届出において、債権として保護に値し、一般債権として認識し、届出を認めるかについては、管財人が争うべき債権だろう。
 
遡及的に譲渡債権が一部あるいは全部存在しなかったという危険は、譲受人が負担し、特約があればそれに従うとしても、過払い金が発生する債権についてはどうか。
ここで、債権譲渡や解除権から、不当利得が譲受人にあったかなかったかという要件論に争点に移ってしまい、譲渡時点では(なんら共謀もなく)譲受人は不当に利得できるような状況にないことが明らかであれば、責任を負担しなければならない正当な理由がない。
 
したがって、譲渡時において遡及的に債権の不存在が確認された債権の過払い金返還請求権は、譲渡者に対してのみ請求できる。ただ譲受人によって借り手の権利に侵害がある(共同)不法行為による損害賠償請求は、請求原因を別にする債権である。

過払い金の性質は、不当利得返還請求権

債権譲渡と過払金債権の移転

ひとに請求するとき、法に根拠を求める。理由なく請求できません。
法(条文)は要件と効果を定めます。要件とは、その請求を正当化するための根拠付けです。要件を満たせば、請求権が成立し、発生する。要件を満たさなければ、成立しないので、違法あるいは不当な請求となる。
効果とは、債権が成立したら、その結果として、何が起こるか、何を請求できるかということです。損害賠償とか処罰とか。

さて不当利得返還請求権の要件とは何か。法(703条)は要件だけを定めますが、裁判により証明しようとすると、要件事実が必要となります。要件にあう事実を提示しなければならない。裁判による評価・判定ちは、要件事実が要件を満たすかということになる。

過払金返還請求権を成立させる要件は4つ。これを過払金の権利の発生を求め、請求する側がひとつひとつ証明しなければ、703条の権利は成立しない。
①XがYの行為により金銭的損失を被った事実
②YがXの支払いにより利益を受けた事実
③Xの損失とYの受益には法律上の原因がない事実
④Yの受益とXの損失には因果関係がある事実

ここでXは、過払い金を返還請求する側なので、unknown factorではない。Yは満たされるひとを決定することになる。ここで、Yを探す作業にする。Xの支払いを受けたひとをQとする。

③により、Xは、ローン契約の債権者であるQに支払った金銭には支払いの原因はないと主張する。なぜなら、引き直し計算により、XのQに対する債務は消滅していたから、原因のない支払いであった。(取引履歴にもとづく引き直し計算書)
①しかるにXがQに原因のなく支払ったことにより、Xは損失を被った。
②Xが知る限り、Qは、原因のない不当な利得を収受した。(証拠: 支払いの証明、取引履歴)
④ここで、X損失とQ利益との因果関係は、当然。

さて、703条は、不当利得の相手として、Xに損失を出させて、利得を得たものしか規定しない。Xが払い、YがXから受領しているケースでは単純な話となる。不当利得の返還を求めるのだから、受け取った事実がキーになる。誰が受け取ったか、その人が利得を得ていれば、返還請求できる。
703条は、過払い金返還請求権が債権でありながら、明文上、債権譲渡を議論しない。債権者が誰であるかどうかは、請求権成立の要件ではなく、利得を得たものということになる。

訴訟を起こすとき、手続き上、債権の帰属をメルクマールとしてあるいは債権の処分権を有するものに対して、請求すると誤りやすい誤解に陥ることがある。
不当利得の返還請求権では、債権の帰属も、処分権も問題にしていない。「誰が利得を収受した」(過去形)かということだ。

債権が譲渡されたから、譲受人Pに不当利得の返還責任があるというものではない。もし譲受人Pが利得を得たというのであれば、703条にあてはめ、Xの支払いにより、②譲受人Pが利得を得た事実、④因果関係を証明しなければならなくなる。債権譲渡というだけで、因果関係が満たされる事実なのか、評価を要することになるが、それは②が証明できれば、因果がより明確になる。

過払い金が債権譲渡前に発生していれば、誰が収受したかは、明らかである。譲受人PはXからの支払いを受け取っていないから、譲渡者が負わなければならない。すなわちXからみてYという不覚知の存在は、Xから支払いを受領したQという判定となる。

703条は債権譲渡を明示して、検討していないが、だからといって、Xから直接支払いを受けたQだけが利得を得たひととは考えていないことは、要件を見れば推測できる。②は、Yが、Xの支払い受けたものであるとはどこにも定めていない。①もYの行為により、損失を受けたとあるにすぎず、Yが不法の理由をX に示して、Xの損失発生とYへの利益の還流を誘導したようなケースを想定しうることになる。だから④の因果関係が問題になる。もしXから直接受領したQの責めだけを追求するなら、こういう要件論にはなっていない。
①XがYの行為により金銭的損失を被った事実
②YがXの支払いにより利益を受けた事実
③Xの損失とYの受益には法律上の原因がない事実
④Yの受益とXの損失には因果関係がある事実

そこで、債権譲渡に当てはめ、Y=Qなのか、Y=Pなのか、事実関係を探る。
譲受人Pは、債権プール全体を元本の半値で購入した。一部に過払い金債権(Pにとっては債務)が混じっていた。引き直し計算結果や、過払い金などの理由から、半値に割り引いて購入している。
Pは、Xからの引き直し請求が無い限り、引きなおされないままの元本を正当に請求し続けられる。過払い金が発生している債権についても、請求できる。
したがって譲渡者Qは、Xの過払い金の支払いを直接受領した事実を認め、争わないが、譲渡の時点で、Qは譲渡損失を出し、将来に向けて(譲渡損失額相当の)利得がPに移転されたという主張は説得力があるか。だからPは、原因のない請求をXにできる。

もしQとPに共謀があり、Pが利得を得るために、Qに過払い金を収受し、半値に割り引いて売却することを企てた場合はどうか。

しかしいずれにしても、703条要件は、利得を受けたと過去形しており、これから利益を得る機会を買ったからといって、未だ利益を実現できていなければ、P=Yとは判定しようがない。

それなら、元本の半値で買ったPが、それを100%の価格で転売したら、Qの損失で利益を得たPが、利得を得たことにならないか。④の因果関係があるといえるか。NOだろう。売却益が出たという結果論にすぎない。共謀があり、Xに損失を与えようとする共同の工作があれば、別だが。

したがって、Xから契約上の原因なく、金銭の受領を受けたQが、返還責任を負うものであり、それを譲受人に転嫁することは、容認されない。

 

 
証券化投資家の注意義務fiduciary責任の範囲
証券化で運用する担当者の債権譲渡についての注意義務
 
 
資金委託者からして、資金受託者の証券化の運用責任はどの範囲で免責されうるだろうか。
わが国法では、fiduciary責任法理の適用を請求原因の根拠としてあてにできないとしても、有償の運用委託を受ける職業人としての通常人の相当の注意義務が問われる。
市場の全員に違反があっても、通常人が全員注意を怠ったから、自分が免責される理由になるとは考えられない。
 
証券化に投資する以上、債権譲渡の登記がどのようなものかは必須として知らなければならない。格付けに依存したとして、注意義務を免責できるものではない。
登記実態を知らないで投資することは、何が起こりえるかについて予見することができない。結果回避できるための予見に必要な知識は、投資家として必須であり、市場全員が知らなかったとしても、勉強を怠った結果、損失を招いたとすれば、免責理由にはならない。重大な注意義務違法であり、結果回避を怠る原因を自らが招いた。したがって、違法性がある過失責任をともなう。
損失は、もし債権登記の性質を知っていて、なおかつ注意して投資していれば、回避できたかもしれないし、知識だけでは防げなかったかもしれない。しかし知っていて、損失発生の恐れの結果を予見しつつ、回避しようとした心的状況があるのと、知識を身につけようともしなかった失当とは明らかに違いがあり、注意をして知識を得たが結果予防ができなかった場合には、違法性が阻却される防御が認められうる。
 
さて、証券化投資家であれば、全員が知らなければならない(そうでなければ損害賠償請求を負う)登記の実態とは何か。
 
以下に回答しなければならない。(Yes/No)
1. 債権譲渡で譲り受けた債権者は、譲渡債権を識別するために必要な情報は保持しないと、万一のとき、請求することができなくなってしまう。登記は目的のためにある。したがって、譲渡の年月日のほか、債務者の識別情報として氏名、生年月日、住所、債権の識別情報として、債権額、支払期日、満期、与信枠、金利その他重要な条件があれば、その他項目として、登記される。
2. 登記の譲渡債権の債権額は、譲渡契約時の現存債権残高が記載される。
3. 登記の譲渡債権の満期は、債権の満期日(分割弁済であれば最終支払い日)が記載される。
4. 債権額は毎月返済(場合により追加貸付ある場合にはその取引)により変動する。
債権の識別をするためには、債務者名と債権額は必須であり、また回収のためにも必須の情報となる。債権額は、元本返済があれば、それだけの金額相当額、債務者は弁済を免責され、債権はその分消滅している。登記の金額は、それを反映して、債権識別ができるように、債権額変動の登記をしなければならない。抹消を怠れば、単に不正登記となるにすぎない。
5. 譲渡債権が期限前に完済されたとき、債権は消滅し、不存在になるので、抹消登記しなければならない。
 
発展的質問
6. 債権譲渡法理は、請求原因の一部発生している場合には、将来債権譲渡を認めている。たとえば、今後10年間の診療報酬請求権。(債務者である保険機関と債権者病院の契約関係は成立しているが、患者がこなければ、債権は発生しない) したがって、登記においても、将来債権の譲渡の登記を認めている。
この場合、将来債権の譲渡債権額の金額は、将来債権譲渡契約に記載された最大額を記載する。
 
7. 将来債権が既発生になった時点で、速やかに現存債権として、登記しなおさなければならない。そのとき、将来債権登記は、その分の金額を減額修正登記をしなければならない。
 
8. 現存債権と将来債権が混成する債権(リボ式借り入れ可能なローンなど含む)の譲渡登記では、発生済みの現存債権額と未発生の将来債権額は、別々に記載項目があり、登記される。未発生の債権を登記で保護する必要がないからである。
 
9. 将来債権の2重譲渡を防ぐため、同じ条件の債権であれば、譲渡者、譲受人、債務者が合致すれば、ブロック(禁止)される。
 
 
答え
1. 譲渡登記では、債権の識別はできません。譲渡者、譲受人、債務者、金額だけ
2 残存額を記入するか、以下将来債権額を含んだ金額にするか、空欄にするか。
3. 信託譲渡であれば、信託期間の終了日+1年などとして、債権の期日とは無関係
4. 最初の登記の日の残高を登記すれば、そのまま。将来債権登記であれば、それもそのまま。
5. 同上
6. 残高はいくらでもかまわない。
7. その必要がないし、法的な義務もない。
8. 混成登記は、金額は、好きな金額を記入。登記期限を10年とすれば、残高、与信枠の10倍の取引があるかもしれないので、100万円の与信枠があり、現在80万円の既発生債権残があれば、1000万円と登記されることも認められる。
したがって、証券化で数万件ローン・プールで100億円の残高がある債権の登記金額が、現存額、空欄、1000億円という場合もある。
9. そんなブロックはかからない。
 
したがって、債権譲渡の登記は、不動産と違い、識別すらできないし、金額も不明な登記で、債権者、債務者、譲受人、移転の原因しかわからない。
 
譲渡者の不正譲渡があれば、登記の点から、防ぎようがない。
 
 
以上の質問に正しく回答できなかった投資家は、結果(リスク)予防できない状況に自らを放置していたので、組織として、注意義務を怠っており、知識がなかった投資判断により、証券化で損失が発生した場合には、資金委託者から、賠償請求に応じなければならない。
 
なお格付け事務所は、上記の実態を知りつつAAA格付に値するとして、格付けしている。譲渡者に嘘はないというのが、格付けの前提であり、嘘をつかれたら、想定できない格付け外のリスクであり、投資家責任となる。
 
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