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クレディア 民事再生手続きに関連し、証券化の受託者責任、投資家責任を考える
金利引きなおし債務整理で消滅する元本債権と不当利得返還請求権の扱い
貸付、保有、管理が切断され、責任隔離の現代金融技術が生んだ証券化の倒産法への挑戦

日経金融新聞、日経公社債情報、そして本日9/21日経新聞と、貸金ABS、過払い問題が指摘されています。
2つの新聞では、ドイツ証券の江川由紀雄氏のコメント、元本割れリスクが紹介されている。

本日の記事の以下の論点について考察してみよう。
① 過払い金の返還が増えることで、証券化商品の利払い原資となる信託財産が減ってしまう恐れがある。
② 民事再法申請で問題が顕在化しており、投資適格債でも元本割れになる可能性が出てきた。
③ 過払い金の発生で信託財産が当初の想定より少なくなった場合、信託銀行は不足分をクレディアに請求できるが、その請求権は、民事再生手続きで、一般債権者と同等な扱いとなる更生債権となる可能性が高いからだ。再生手続きでのカット分を信託銀行は受け取れず、ABSが元本割れになる恐れがある。

①②の解釈の理由は、③で説明されているが、正確によむと、①は、過払い金が増えて信託財産が目減りするとあり、まずは現象面の説明で、その補償としての請求③を考慮しているわけではない。単純によめば、信託が引き受けた財産自体の価値変動、毀損を意味するにすぎない。

③にように、過払いで減った債権が、委託者に対する一般債権にいれ替わるということであれば、証券の信用格付は、クレディアの一般社債格付相当に依存することになり、証券化格付、あるいはその前提となる倒産隔離、真正売買を前提にしていなくなってしまう。もっとも、その依存の金額割合が無視できるほど小さいか、他の信用が数量化できる手だてで補完されていれば、問題はない。たとえば、現金積み立てとか。
証券化では、そうした代替をおかない場合、過去実績を評価し、リスク評価を測定し、格付に応じた必要な信用補完を準備する。今回の当然、何らかの補填されるメカニズムが組み込まれてなければならないが、ただ過去のパフォーマンス実績と実かけ離れたということであれば、サブプライムな問題と根は同じということなる。

② 投資適格でも原本割れになる?と聞いたら、格付機関は憤慨でしょう。そんな恐れがあれば、監視銘柄でなくて、格下げにしなければならない。未だなっていないということは、パフォーマンスがそれほど悪化していないか、担保積み増しができたか、それも現金を積みましたかということでしょう。信託資産に過払いリスクがないという想定であれば、開示されているでしょうし、そんな証券であれば、誰が購入しますか。

③の前段は、①の繰り返しに過ぎないが、再生手続き下で、信託財産が目減りすることのプロセスを考えてみよう。

取引履歴の保管

取引履歴は委託者が保管しており、信託は、譲渡後のデータしか保有していない。ただし場合によっては、譲渡後のデータさえもないかもしれない。証券化で、証券化サービサー(通常信託委託者)からバックアップサービサーと受託者に交付されるデータは、個々の返済・貸付情報は通常データファイルに含まれておらず、サービシング期間(隔週、毎月)終了時に、そのときの口座の状態のデータを引き渡すに過ぎず、前回末と今回末の間に起こった取引は、含まれていない。口座の状態とは、残高を意味する。前回の末残との比較から、ネットでいくら増減したかはわかるが、どれだけの借入・返済があったかは、わからないし、そのため受託者は残高照合さえもできない。多くの取引では、サービシング期間のすべての取引を、それぞれ返済と貸付に分けて、貸付額と返済額のそれぞれの合計を提供することもある。与信枠内の取引自由のため、2万円を3回引出し、返済を2回して合計4万円ということもある。個別の取引の日付がわかなければ、金利ひきなおし計算して、残高を算出することはできない。現状の受託者には、そうした引きなおし計算できる機能や能力を求めよう義務付けられていない。なおこれらのデータファイルの中身と交付条件は、委託者、受託者の間で決定されるが、証券会社と格付会社のオブザーバ的意見に従う。とは、どういうことかというと、彼らが足りないといえば、個別の取引を交付することになるし、求めなけば、交付されない。格付機関は、ほとんどデータの中身について、コメント(要望)することはない。正確には、その点については、格付基準がない。すなわち、このことから、信用リスク分析には不要という判断が推定される。

証券化サービサーの権限の範囲と裁量
債務整理、金利引きなおし計算
債務整理の文書提出命令
契約、基準設定のストラクチャリング・プロセス

通常、証券化されたとき、債権譲渡特例法にしたがい、信託を原因行為として、電子媒体により債券譲渡登記され、対世効を確定しますが、貸金債務者に対する譲渡通知は、一定の信用事由などが生じない限り、留保され、債務者対抗要件を具備していません。ただしいつでも債務者通知できるように、バックアップ・サービサーには、本人識別情報(住所、氏名)がサービシング期間ごとに、あるいは定期的に交付されます。信託財産に元本の返済があれば、あるいは貸倒が発生すれば、担保財産はその分減少します。その場合、格付上の要請から、必要な担保額を維持するために(正確には格付の要請ではなく、必要額を維持しなければ、格付が落ちるが消滅するにすぎない)、追加債権譲渡が必要になりますので、サービシング期間ごとに追加譲渡を認める方式であれば、サービサー・ファイルは、期間末ごとに、データをきったスナップショットを渡すことになります。
貸金業法24条2項は、債務者への譲渡通知を要求していますが、回収者が実体上、サービサーの立場であること、信託契約上許されたサービサー権限の範囲で回収していることは、債務者には通知されていません。かつて日立信販の取引のように、一部の取引では、通知している取引もありましたが、今は使われていないようです。
信託残高の減少の理由には、返済や貸倒の他、委託者への戻し譲渡による減少があります。信託に譲渡が認められる適格債権基準を満たさなければならず、それに違反が見つかれば、厳格には信託契約上の表明保証違反(適格債権を譲渡するという表明)を構成しますが、一部信託を解除して、委託者に戻すことになります。
リボ枠がある債権では、残高が常に増減します。通常、当初50万円までの信用枠を認めたリボ契約、残高47万円がが信託移転の対象としましょう。信託移転半年後に、延滞が一度もないし、一回の完済があったので、信用枠を100万円にしたとします。信用が優良で残高はつねに40万円以上あり、クレジット・スコアも当初200点だったが240点になったので、利用金額引き上げだけでなく、金利も29.2%から25.555%に下げたとします。これはサービサー権限の範囲でしょうか。サービサー裁量権は、信託契約に規定されるか、サービシング契約に組み込まれます。信託は、信託財産について契約条件を変更する権限を与えているでしょうか。譲渡通知もしないで。
そうです。与えています。一定限度ないで。しかし信託契約が、信用枠は100万円以下として定めをおいており、それが適格債権基準として指定されておれば、信用枠を100万円を超えて設定した時点で、信託不適格債権となります。というより、条件を変更したければ、変更前に信託を解除して委託者に戻すことになります。そうでなければ、他人の財産なのに、サービサーが自分の名前で契約を修正できる権限などあるのかないのかは、通知がなされていないのですから、さらに紛争の危険が生じます。しかしサービシング期中、そんな面倒な事務ができませんので、実体上は、事後の報告で、条件変更不適格債権として、戻されます。証券化手続き上は、まず当期のサービシング期間終了後の受託者に対するサービサー報告(信託事務の委任による発生する受任者義務)のなかに、戻し債権をリストして申請し、受託者による承認を、受託者報告の中で、あるいは別途、何らかの方法で受けることになる。
適格基準は、さまざまであり、譲渡時の要件を満足させるための債務者及びローンの適格基準と、証券化期中の要件があります。通常、信託移転時に適格要件を満たせばよいはずですが、債権の状態も、債務者の状態も、期中で変動します。信用枠の変更が契約の修正を伴うときには、権限外が問題になりますが、信用枠がもともと150万円のときには、修正は問題にはなりません。しかし信託上、100万円以上のローンを組み入れないという条件があれば、信用枠を増額するのは許されても、不適格になり、戻しの対象とされるでしょう。年金以外に収入がないひとは適格としないとしたり、年齢基準を設け、70歳未満を適格基準としたとき、譲渡時は満たしても、その後期中では、年齢はとるし、収入がなくなることがあり、条件が満たされないことが生じます。しかし信託に一旦移転した以上、そうした条件での信託解除は、売買の認定要件を満たさないという意見がでてきます。同様に、借入総額が、400万円までの債務者とか、借入社数が5社までの債務者とか定めた場合も、移転時に、399万円や4件でも、移転後450万円や7件になったら、どうするか。これを不適格だからといって、入れ換えを認めれば、随時入れ換えになってしまい、真正売買が否定されてしまい、一種の譲渡担保設定の徴表とみられかねないので、許されません。こうした基準は、証券会社の取引顧問弁護士の意見に従います。格付は、真正売買の見解が出てなければ、通常コメントすることはありません。
しかしそうした場合、信託財産の信用の質が悪化することを意味し、格付を維持できません。たとえば、移転当初には、借入6社以上がなくても、一年後には、信託財産の10%になっていた。70歳以上も5%になっていた。総借入額400万円超の債務者が10%になってしまっていたとしましょう。それぞれに信用悪化分に対して、超過担保を積むか、それに見合う現金をダイナミックに積み立てたり、取り崩したりすることになります。すなわち、格付機関は、こうした基準を設定するさい、上記の例では、年齢別、借入総額別、借入社数別、スコアリング別の貸倒、延滞、司法介入率などパフォーマンス実績情報についての分析情報の提供を受けていることになります。そうでなければ、経済的合理性のある現金積み立てを設定できません。
こうして、不利な積み立てになる場合、個別取引に任命された弁護士の決めた真正売買の要件を満たしながら、70歳以上や多重債務者ローンの信託を解除し、随時定めをおきながらサービシング期間ごとに戻し譲渡しているのです。たとえば、全体で、10%の範囲で解除できるとか、それは法律顧問の見解に従うのであって、格付会社の見解ではありません。

取引履歴データの話が要領をえないまま、それてしまいました。こうして入れ換えをともなうため、取引履歴情報を信託銀行が管理するのは、容易ではありませんし、もし管理責任を負わせるのであれば、信託手数料が増加し、調達費用が魅力ないものになってしまいます。そのため、取引履歴を受託者が管理することはなく、現実的には、委託者であるサービサーの管理に委ねています。
結果として、かりに債権譲渡通知が打たれていても、債務整理を目的に金利ひきなおし計算のために取引データを求める相手方は、貸し手ということになる。権利者である受託者に求めても、事務を委託しているのですから、それについては、問題がありません。しかしここで、受託者が自分が計算できない能力の財産を受託するに適するかという疑問はあります。受益者保護の点からですが、これは、受益者、すなわち投資家はそれを承諾している。信託契約に、個別ローンの債権残高の計算能力、機能について、信託に備わっていることを信託契約は求めていない。
したがって、その基本的財産管理能力の欠如については、投資リスクとして重要であるので、証券発行目論見書に記載されていなければならないと考える(私見)。リスク・ファクターに記載されるべきことであろうが、そうでなくてもどこかに、受託者の機能と任務について、特に注意点となるだろうが、記載のないことは、悪意あるそれとも不注意による過失による不開示とみなされるだろう。さもなくは、投資判断上、重要な注意点でないことの証明責任は、目論見書作成者にある。
目論見書作成者とは、この場合、資金調達者をさすわけではない。受託者の項目だけに受託者の義務かもしれないが、証券を販売する以上、当該目論見書の部分については、証券引受会社責任となろう。その場合、SPCの証券発行に携わる証券会社とその法律顧問となるが、証券会社は、法律リスクに関する件は、国家により法律資格の認められえた専門家であるゆえ、その見解について、より以上の注意を持って、判断する必要はないので、責任はない。証券発行の顧問弁護士報酬は、通常証券化では何千万円と高額なので、目論見書記載についての責任免責条項のある合意を交わしたとしても、免責されるかは、投資家が専門家の過失による不開示について、訴えをおこしてみなければわからない。格付会社は、この点について、重要な問題とはとらえておらず、格付基準上、指摘がない。

さて、債務整理をしようとすれば、こうして、再生手続き申し立ての前後を問わず、取引データは、証券化サービサーに求めることになりますが、もう一点の問題があります。再生手続き申請事由により、通常、債権譲渡がだれだれに対してあったことについて、債務者に内容証明郵便により通知がなされるという信託規定です。受託者は、バックアップ・サービサーにサービサー・ファイルを印刷して、通知する事務を委託されています。投資家の同意があれば、この通知は、権利放棄することなく、一時的に中断することもあります。

サービサーはこうして、本来の貸し手として債務者に対する取引情報開示義務を負っていますので、民事再生申請されたからといって、応じないこともできず、また譲渡されたことをもって、応じないことも認められません。かりに譲渡通知が出された場合も、サービシング契約が解除されていなければ、債務整理目的の連絡については、譲受信託銀行でなくて、貸し手が業務委託を受けていると記載されるのではないでしょうか。ところで、信託事務の一部のサービシング契約が解除され、バックアップ・サービサーに委譲されたからといって、バックアップ・サービサーでは、取引履歴を復元して、債務者に提供できる事務体勢ができておりませんし、信託契約上もそれが求められておらず、したがって、受託者だけでなく、格付機関、引受証券会社、投資家も、バックアップサービサーにその能力がないことを認識しております。結果として、信託契約に定めるサービサー信用事由発生によるサービシング委任の解除により、バックアップ・サービサーに回収事務が委託されても、法律行為を含まない債務整理事務は、当初委託者にのこったままになります。ただし委託者のコンピューターのデータベース機能を移転することが出来れば、バックアップ・サービサーも履行することは可能ですが、経済的費用があうかどうかは、費用は投資家配当に先立ち、信託財産によって優先的に負担されることになりますので、格下げになったり、格付消滅されることもありえます。すでに委託者は手続き下にあれば、追加の信託譲渡が認められませんので。

当事者適格

権利者が不明であれば、貸し手民事再生手続きにおいて、不当利得返還の債権届出は、権利者不確定により、誰に出すのか不明です。不当利得が確定している債務者はとにかく、みなし弁済について判例法理にしたがい争うところがないとしても、未だ金利引きなおし計算ができていない段階では、不当利得請求権が確定できないので、法律上の争いというのではなく、単に事実において不当利得金額の争いのある債権について、どのようにして債権届出するか。手続き内で争うとしましょう。訴えの対象となる貸金は、信託財産になっていて、すでに真正売買とされており、したがって訴訟追行権が債務者にはありません。支払えという判決を受けるための当事者(被告)適格は、信託銀行にありますから、受託者に対して提訴することになります。
そして、裁判所による文書提出命令は、第三者である委託者に対して出してもらうことになる。そのとき、拒む恐れが高くなりますが、受託者に対して文書提出命令を出し、一部残ったサービシング事務としての金利再計算事務を委託者に履行を求めることで、委託者に不履行があれば、受託者が契約違反により、損害賠償を求めることはできますが、手続き開始決定され、場合により債権届出がおわったあとの再生会社に対する訴訟ということになります。契約上、損害額算定基準が不透明です。なぜなら、証券化契約当事者は(この場合証券化の引受証券の取引顧問弁護士ということになりますが)、および格付会社らは、そうした不測の事態を含む事務の不履行がありえるという前提で、契約がなされていないからです。
そこで委託者を共同被告とする裁判を求めようとすれば、委託者と受託者は、利害が一致しているわけではありません。委託者の当事者適格理由をどうさがすかとなりますが、委託者は真正売買後も劣後受益権を保有しており、信託財産の経済的利益を列語的とはいえ共有していると主張してみても、法人格が別の団体に債権が譲渡されている外形を重視し、かつ信託財産の管理処分権に、委託者が買取しない限り、制限を加えられる権利を有していないとすれば、訴訟追行権は却下されるとみられます。

こうして、民事再生の手続き開始された場合には、債務整理交渉は、取引履歴データに関する事実について争いがある場合には、再生会社に対する訴えをもってなされるでしょうけれど、信託財産に関する債務整理は、受託者に対して求められ、裁判外で取引データを整備して、委託者経営責任者が引きなおし計算が正しいことを証明した上で、受託者に通知し、受託者はそれをもって、一部元本の減免和解、支払いに応じるかどうかというプロセスを経ることになる。しかしながら、受託者は、一部減免和解の権限を投資家から委ねられてはいないので、信託義務違反を問われる恐れがある。信託事務の義務違反とは、失われた信託財産の補填請求を意味するから、事実行為以外に、法律行為をしないだろう。brain-dead. 脳死状態が証券化QSPE必須条件でもある。事実行為とは、計算により過払い額が確定すれば、支払うということであり、それについて責任が問われることはないだろう。
こうして、債務整理は事実上棚上げあれ、放置されるリスクが生じる。結果として証券化の債務整理は、金利引きなおし計算残高以上に減免を求めても、投資家集会で過半あるいは2/3の賛成が取れなければ、受託者が自己の判断で同意することができず、そうした和解は取れなくなる。投資家集会とは、受益権はSPCに譲渡されているに過ぎず、SPCは受益権を有するのと社債を発行する機能しかないため、SPCには定款上、信託の財産管理について発言する権限は認められておらず、証券の投資家の同意を要することになる。権利が異なる証券に別れているとき、種類別集会ということになる、

委託者サービサーは、元本減免和解に応じられるか

争いのない取引履歴から金利引きなおし計算をして、残元本を再計算する行為は、特に法律行為に当たらないので、残元本がある場合には、その金額をサービサー報告することになるので、信託財産は減額される。グレーゾーン金利の支払いが元本支払い充当され、債務の一部が消滅し、元本債権が減額されるだけの場合にも、信託契約に、受託者が委託者に補償を求める請求権を定め、当事者合意が得られている場合と、不当利得返還債務の発生するケースだけを想定し、そうしたケースを想定しておらず、明確な定めがない場合があるとみられる。後者の場合には、不当利得返還の結果、信託財産が目減りした場合の補償請求規定の適用を主張して、減額分の補償を請求をすることになるだろう。しかしながら金利引きなおしで、元本消滅についての責任は、元本が存在するかぎりの範囲では信託財産にあり、それを超えた場合にのみ、補償請求ができるとの解釈も可能である。信託契約には、不当利得による支払いがあった場合にはと、明確に限定があれば、減免部分まで補償請求が出せるか、請求原因を見出せるかは、わからない。
サービサーの計算により、信託財産に不当利得が生じた場合には、被った損害の求償を求めることができる。裁判外で計算額に誤りがないと信じられ、受託者が不当利得の返還に応じる場合もあるかもしれない。判決は、訴訟当事者である信託銀行に対して出されるのであり、判決の効力は、委託者が共同被告でない限り、委託者には及ばない。返還請求はしたがって、受託者によって、債務者に月次回収金から支払われることになる。
この場合に、信託財産からの支払いの優先順位が問題となる。信託計算上、決算方法に、費用配当支払いの優先順位が定められているが、不当利得に該当する費用項目がない場合がある。その場合、優先受益者である投資家への配当に先がけて払えるか、その後になるかによって、格付が変更されることになる。必要な信託維持費用に分類されれば、バックアップ・サービサーのスタンバイ料金と同じ扱いとした場合、投資家の元利金返済リスクは高まる。
支払いは、信託財産に生じる元利金返済金から受託者報酬、その他の維持費用を差しひいて残りから、投資家への配当に充当されるが、投資家の前に優先順位が置かれて支払われるとなれば、大きな返還金が発生した場合、投資家への予定された配当は支払えなくなる。信託財産は、一部数%を占める現金を除き、貸金債権で構成され、原資が不足すれば、不当利得の返還は分割となる。
具体的にみてみよう。月の受領する金利合計が信託財産元本債権額の2.26%(未収債権が7%として29.2/12x.93)、元本支払が4%、貸倒が1%で、信託経費としては、投資家の証券金利+調達関連費用+受託者報酬+バックアップ・サービサー待機料+格付手数料などの費用合計を年利3.6%(月0.3%)としよう。100億円の信託財産としたとき、最大で利用できる資金は、6.26億円ではあるが(他に倒産時など危急に備えて現金準備金が3億円ほどあるが利用可能かどうかは信託規定にしたがう)、月次決算期末に、費用総額がその額を超えてしまうと、信託財産は、翌期サービシング期間の期首残高は、元本返済に貸倒の総額を差引いて、95億円になってしまう。通常では、元本の返済金で、信託財産に生じる新たなリボ債権や新規の追加信託債権の譲渡代金にあたられる。この時、信託は、早期繰上げ償還となり、全額の回収金が投資家に支払われ、委託者には、サービシング事務の一部を継続しながらも、その料金について信託契約修正されない場合には、支払いがなくなる。
しかしそれは、過払い金の支払い実績が年間多くても貸金債権ポートフォリの3%の現状から、そうしたケースは経済的合理的には想定できない。ただし不当利得が発生するということは、その債権については元本は消滅し不存在になっているのだから、信託財産の目減りは、その1.5倍ある。結果、信託財産の毀損は、年間7.5%ほどとみられ、貸倒率が年12%とすれば、20%弱がいたむ。かりに再生手続きにおいて、債務者に債権譲渡通知が送付されず、29.2%金利を継続して請求することが決定され、受託者による事実上の承認が得られば、未だ信託財産の元本が傷むことはなさそうだ。通常であれば、金利と貸倒を除いた販売管理費が8%程度かかるとみられるが、その営業経費負担の半分が、劣後持分配当でまかなわれるほどとみられる。上記の例から、29.2x93%-19.5-3.6=4.05%。このときの8%の経費全額を負担できるための不当利得の損益分岐点は、1.422%となる。(29.2x.93-3.6-8-12)x(1/(1+1.5))  
しかし、バックアップ・さービサーに交代となれば、すべての信託債権のローン残高上限の適格要件が100万円以内と設定されている場合には、18%しか請求できなくなるので、信託財産は年6.36%毀損する。18x.93-3.6-19.5=-6.36

ところで、ある債権Xについて、委託者がほぼ保有することがなくて、当初貸付後2ヶ月経過したのち、信託移転され、その後信託にある3年間、当該債権のほぼすべての払いを信託が受領している場合と、当初貸し付けから3年を経たのちに信託移転された債権とでは、不当利得返還金に対する寄与額が異なると考えるのか。すなわち、受領した金利が同率であるとしたとき、後者では、責任負担金は、半分半分とするという主張は、説得力をもちうるのか。残念ながら、信託契約には、そのような負担割合の定めはないので、当事者間の協議ということになる。
いずれのケースでも、不当利得返還して毀損した信託財産については、補償請求されるので、再生計画のなかで、将来発生する補償金がどのように扱われるか、不透明だ。

格付機関が必須として求める?バックアップ・サービサーは現実的には交代不能

一般企業格付が投資不適格の証券化サービサーには、信託契約上バックアップ・サービサーの任命が求められ、信託から委託をうけ、信託に対して多くがスタンバイ料金を請求する。業務は、サービサー交代事由となるような信用事由が委託者/当初サービサーに発生した場合、サービサーからさービシング期間ごとに受け取るバックアップ・さービサー電子媒体ファイルをもとに、債務者に債権譲渡通知を送付する作業が含まれる。

さて、2007年7月17日最高裁判所第二小法廷判決で、「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。」 そして、過払金の計算方法の違いにより、貸金業法43条1項の適用を満たさない取引においても「過払金が発生していないと認識していた場合」でも上記判断には影響しないとした。平成19年7月13日最高裁判所第二小法廷判決同様、貸金業法43条1項みなし弁済の適用がなければ、原則民法704条の悪意の受益者と推定されるとした判決です。
2007年、過払い金に対する金利を求める請求に関し、2月13日判例以降、こうした悪意の受益者推定の判例が続くなか、過払金発生時に、法律上の原因を欠くことを知っていたと推認されるから,グレーゾーン金利による約定利率の請求は,不法な架空請求に当たるとする高裁判決が2件続いた。大阪高裁 平成19年(ネ)第676号 不当利得返還等請求控訴事件(平成19年7月31日言渡)、札幌高等裁判所平成19年4月26日判決。

バックアップ・サービサーに交代すれば、15~20%金利しか請求できなくなるが、それだけではない。高裁判決ながら、債務の消滅を認識しての請求は、架空請求類似の営業行為とみなされるという。受託者の事前の了解を得ない限り、金利引きなおし前の信託残高を基準に、みなし弁済適用がなければ、すでに債務が消滅している債務者に請求して、不当利得返還請求を求めたら、訴訟により5%の金利を請求される恐れが高く、バックアップ・サービサーの独自判断であれば、信託財産には求償できない業務費用となってしまう。
そうすると、バックアップ・サービサー交代になった時点で、すべての信託債権について、金利引きなおし計算をした上で、正当に請求できる元本残高を算定し、その金額を基準に請求するかどうかについて、受託者に決定を求めることになる。受託者は、信託機能を備え持つ金融機関として、架空請求類似営業行為を継続するかどうかについての意思決定に迫られる。
ここで登場するのは、受託者の証券化顧問弁護士となる。受託者は顧問弁護士の意見に従い、業務するという選択をするだろう。サービサー解任したあとのこと、5%金利については、委託者に補償請求を求めることはできないから、および不法な請求をするという裁判上の評価からレピュテーション・リスクが付きまとう。
そうなれば、バックアップ・サービサー交代時点で、信託財産の元本債権総額は、金利引きなおし後の金額によって、大きく目減りする。その金額について、補償を求められるか、信託財産負担かどうかは、信託契約による。明文規定がなければ、契約上は協議ということになるが、再生手続きで債権届出する場合には、請求原因の認否が争われることになるが、有効な合意がなければ、否定されることになるだろう。
信託契約は、債権の態様により、個々の取引で異なるので、標準化はできない。しかし一般に、貸金債権の債権譲渡契約に関する譲渡者の表明保証が、信託譲渡契約でも用いられるだろう。委託者は、受託者と信託契約に合意に至る時点で、双方に、当該債権は、みなし弁済適用ない場合に金利引きなおし計算すれば、債権の一部あるいは全部が消滅していることを認識しており、その上で取引に至る。したがって、受託者はあえて、違反にともなう賠償請求を確保すすために、そうした「金利引きなおしにより債権額が消滅する債権は、信託譲渡される債権に含まれていない」という現実を無視して債権の性格を限定するような表明保証文言を差し入れることなしていないだろう。
2007年以降の債権譲渡では、金利引きなおし計算したうえで、売却価額を決定するだろう。2006年1月以降、判例法理が急展開したとはいえ、すでに2005年7月あたりから雲行きが怪しくなっていた。貸金業法改正の制定があった2006年12月以降の証券化において、金利引きなおしリスクを考慮しないで取引に入れたとは考えづらいので、その分の補償請求規定はくみこまれているだろう。しかし、証券化の真正売買と通常の売買による譲渡とでは、大きな認識ギャップがあり、従来のままの認識で、金利引きなおしなく出される高い格付を悪用し、投資家の不知をついた商品ではないか。ただ投資家は、発行目論見書を機関投資家に求められる相当の注意をもって読めば、リスクは認識できるはずであり、開示が十分であれば、責任は投資家にあるとされるだろう。証券会社は、重大な点について、正確かつ十分な開示を怠っていなければ、免責されることになる。

こうして、信託財産管理処分上、バックアップ・サービサーには権限を委譲して交代しようがない状況のなかに、格付会社やその伝道師の証券会社は、何ゆえ決まりごとのように、バックアップ・サービサーんの必要性を解くのか解せない話だ。投資家は、バックアップ・サービサーが機能するという格付上の評価(機能しないなら格付がでないという反対解釈でもある)を、独自の調査もしないで真に受け信じた間抜け責任を自分に帰すとおもえか。

貸したものが信用リスクを切り離し、信託という他人に保有させ、財産管理能力のない受託者とは別のものにサービシングが委ねられるいう3層構造の金融革新技術。それが生んだのは、投資家を除いて、商品提供者全員の責任隔離の法理なのか。


疑問点  不当利得返還請求に対する求償権付譲渡とは

債務整理にかかわる弁護士、司法書士らは、裁判所に、すでに発生した及び今後発生する不当利得返還請求権について、一般債権とは別扱いをもとめている。裁判所が、債務者保護から、かりにそうした決定を出すとしよう。そして、証券化による権利移転債権についても、それを適用するとしよう。
その決定は、すでに信託財産に対する侵害行為となる。証券化は、神聖なる売買なのだから、誰もおかしてはならない神のルールだ。不当利得返還請求権が、債権から生じるものであれば、すでに権利を喪失し帰属のないものに、その効力を及ぼすことができるだろうか。裁判所の命令は、直接信託財産に向けられたものではない。もし裁判所の決定により、信託財産が侵害された場合、受託者はその補償を、損失発生原因に帰責性を問えない再生会社にもとめることができるのか。

再生手続きの裁判所決定が、他人の財産、信託財産に及ばないとすれば、再生会社が、証券化移転債権を含めた回収管理している債権全体から生じる不当利得請求を、自己の固有の財産だけで負担するとしよう。銀行債権者の犠牲のもと、証券化投資家を保護するのか。銀行には株主がいる。銀行取締役は、そうした法的根拠があいまいな犠牲を合意できるか。

債権の譲渡が、契約の譲渡でなく、契約から発生する債権で、債権を譲渡する実体は、債権にかかる請求権と訴求権を一体にして移転することになる。その場合、不当利得返還請求権だけを切り離し、譲渡対象としないで、譲渡者に留めおくという法構造は、法技術上達成しうるか。単に、債権譲渡して、いっさいの権利義務を譲渡し、不当利得返還請求権については、求償する権利を与えるとすればよい。しかしこれでは、真正売買の要件事実は満たされるのか。むしろ、そうした債権が生じたとき、信託外で、損害賠償することができ、その場合には、委託者は争わないという同意のほうが、真正売買には適合する。他方、債権に随伴して生じる請求権は、サービサー責任という構成がとれなくもない。しかし、受託者及び投資家は、委託者兼サービサーが利息制限法を超える金利を請求し受領していることを認識しており、問題提起もしていないのいで、契約上も承諾しているとみなされるだろうから、サービサーだけの責任とも言いがたい。

このように保有と管理が分断され、信用リスクが切断され、投資家に移転され、オペレーション・リスクが委託者に残っている場合に、倒産法理の求める債権者平等原則をどのよう実現できるだろうか。

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クレディア 民事再生でどうなる不当利得返還請求権と証券化の扱い

貸金債権が証券化され、証券化期中にあるとき、信託委託者の民事再生、倒産手続きで、証券化債権に生じた不当利得返還請求権の法律関係と扱いを中心に考察する。


I 民事再生手続きと証券化譲渡(売買)債権の扱い 

1. 証券化の法構造入門、証券化の関係者、信託の利用と受託者責任、信託委託者の義務、証券化サービサーの権限
  譲受・受託者(信託銀行)、信託委託者兼サービサー、受益権購入者兼証券発行SPC、バックアップ・サービサー 、証券引受会社、格付機関、顧問弁護士ら、会計士
2. 証券化の真正売買の仕組みとメカニズム(証券発行の契約関係) 
3. 破たん前の証券化の債務整理の処理方法(信託の一部解除)
4. 証券化債権の手続き内のでの債務整理交渉の相手、不当利得返還請求権の貸金業者の当事者適格(貸し手、サービサー、受託者、それとも投資家)、信託委託者共同被告、文書提出命令は、サービサーに
5.  サービサーの権限の範囲と違反
5. 不当利得(確定)債権の受託者への請求と支払いの能力は信託財産の範囲で
6. 世界に散らばる投資家の過払いリスク(有毒廃棄物)負担
7. 過払い負担した受託者の貸し手への補償請求権と手続き処理の扱い
8. 証券化期中利益=超過回収金は、再生会社に戻らないで全額デフォルト・トラップされるという意味
9. サービサーによるサービシング事務受託の解除
10.  バックアップ・サービサーに交代したとき、2007年判例により、金利引きなおし計算して債務消滅した債権から債権不存在を認識しつつ回収するのは悪意の受益者として扱われる結果、その時点で信託財産価値は? 
11. 信託契約変更の必要 

II. 民事再生手続きと不当利得請求権の処理(倒産処理の基本原則を学ぶ)
1.  なぜ民事再生か
2  債権不届出は、権利放棄を推定されるか。
3. 手続き下での申し立て前に原因がある過払いの訴訟の提起
4. 手続き下での裁判外和解、裁判上の係争の扱い
5. 不当利得は共益債権とは分類されない



証券化の債務整理、不当利得請求権の扱い

通常証券化では、調達額の1.25倍の担保設定をしますから、担保設定額は、250億円となり、調達額ベースも、債権額ベースでも、単純に4人に1人が、証券化されていることになります。投資家の希望で、あるいは格付上や受託者の要請から、貸付の経過が4年以内の債権だけが、証券化されていることも考えられます。
クレディアは、証券化契約にもとづき、特定債権の貸金を信託に真正に譲渡し、弁護士から真正売買意見をとっています。受益権は、そのためだけに設けられたSPCに売却されており、SPCの唯一の財産は受益権でそれを引当財産にして証券を発行し、通常AA~Aの格付がつけられて、投資家に販売されています。
ここで、担保、担保額、担保設定という用語法をつかっていますが、正確には、信託設定、信託財産額を意味します。

証券化されると、貸金債権は、信託銀行(受託者)に証券化目的に譲渡されており、債権譲渡特例法に従い登記されています。信託への移転後も信託債権について、クレディアは信託契約上受託者からサービサーとして回収事務委託されておりますが、他人のための財産管理です。法律構成上、代理人でも、授権でもありません。事務受託にすぎません。
ただ証券化は、債務者に対する通知なく、登記上の譲渡の対抗要件だけで済ましていますから、関係当事者以外、証券化以前と同様に、業務されています。しかし、契約上、債務整理の和解や不当利得返還請求権がある場合には、その債権について、信託を毎回一部解除して、現状有姿で戻すか、元本額で買い戻し、権利を再移転してから(あるいは和解後事後的に移転処理されることもある)、自己の債権として、和解されており、債務者が、受託者である信託銀行と交渉することはありませんでした。 

無償で戻す場合には、必要担保額が維持できませんので、格付維持をする場合、繰上げ償還を希望しなければ、実質的に追加の債権譲渡(差し替えの担保設定と実質は同じ)が必要と義務付けられます。
再生手続き、それ以前の保全手続きでは、信託の担保解除するのはできるでしょうけれど、追加の譲渡は偏頗譲渡、危機否認される怖れがたかく、無効の訴えが提起されるでしょうから、認められません。

また現金購入も同様、価値のない債権を、負の債権を、経済的妥当性のない価格がで買い取ることになるので、再生会社債権者に対して、詐害行為となるでしょう。
そうすると、再生申立て以前のように、クレディアが自由に、自分の債権として、債務整理して和解したりする権限はなくなります。権利者のための財産管理になり、信託がどれだけの裁量を認めるかにすぎません。事前同意のない権限外の減免和解は、信託財産に関して、重大な契約違反であり、サービサー解任事由でもあり、損害賠償の対象となります。投資家が権利放棄しない限りは。
ただし、信託移転前の取引履歴情報は、委託者であるクレディアにあるので、債務整理のための履歴情報取得は、クレディアからなされなければなりませんし、履歴情報の提供は、事実確認行為であり、法律行為でないので、サービサー義務違反を構成しないと考えます。ただ事実の開示に過ぎませんので。
そこで、保全期間を含め再生手続きのなかで、債権額の減免請求や過払い請求となると、請求先が違うというか、権利者である受託者にいってくれ、当事者適格性を欠くということになり、提訴しても、却下されることになるでしょう。すでに、再生申立会社の財産ではないのです。財産としては、サービシングをする権利だけです。しかしながら、債権回収のため訴訟を申し立てる権利も、自己の債権を証明できないので、法的には認められません。

ただし不当利得に関する責任が、信託移転前と移転後の権利保有期間によって分断されるという理論をたてれば、また不当利得は、すでに信託移転前に生じており、債権が消滅していたということであれば、訴えは、再生会社を相手にすることになる。ただしこの場合、受託者は、債権が消滅して存在しない債権を信託譲渡したとして、重大な点について債権の適格性を欠き、不正、虚偽取引で一部契約違反を構成し、あるいは債権について虚偽の報告をしたとして表明保証違反を問うことができれば、委託者クレディアに賠償請求することになる。だだし、譲り受けた受託者側として、過払い債権の発生蓋然性は、当然の調査確認義務を負っており、委託者のことばに依拠しただけで判断したとすれば、受託者にも、不注意は発見されるので、その分について、過失相殺が認められよう。

こうして、再生手続きでは、結果として、債権届出を受け付けられない債権がでてくる。債務整理のためのデータ開示は、クレディアに求められるが、受託者を訴えて裁判上の争いになり、裁判所に文書提出命令を求めるのは、訴訟当事者でないクレディアになる。裁判上の部外者が協力してくれるか。結果として、自分にとっても不利な結果になるので。
共同被告として、訴えを出せるか、権利関係の検討を要する。なぜなら、たぶん信託受益権の10~20%を占める劣後受益権(超過担保目的の不可分共有持分)は、クレディアが持っているからであり、債務整理損失を真っ先にカバーする補填部分だからだ。

信託は法的な外観は受託者が権利者ですが、受益権が投資家に売却されていますので、経済的な持ち主は、世界中の不特定の投資家ということになります。たとえば、特定の4万件ローン、調達額100億円、担保設定された元本総額で120億円が信託されているとして、信託債権の範囲内で、信託銀行は過払いを返済することになるでしょう。その元本をもっても足りなければ、過払いは返還される原資がありません。もし150億円の過払い金が請求されても、30億円はカットされるという意味です。
信用リスク負担は投資家にありますから、過払いがなくても、120億円の債権が金利引きなおし計算で、全額がゼロ円債権となれば、投資元本の回収金はなくなります。すなわち、金利引きなおしで、担保の60%が消え、40%相当分で過払いがでれば、投資は全額損失になります。

信託財産に対する過払い金請求、債務整理

過払い返還請求の手続きとしては、再生手続きで債権存在の確認を受け、不当利得債権を確定させ、その証明をもって、信託を管理する受託会社に請求を起こすことになる。受託者は、その請求について、裁判外で争わずに支払うかどうかは、不透明です。投資家の同意を求める必要があるか、財産滅失行為が受託事務の範囲か、不安であれば、確認をとるでしょう。なぜなら、投資家は、元本が返ってこないことはあきらかだからです。

さて、受託者が信託財産から不当利得請求に応じて履行した場合、受託者は、信託契約上、その補填を求めて、再生会社に補償の請求をだすことになります。そのとき、再生会社によって、一部切捨てられるでしょうけれど、一部補償に応じることになる。そうすると、その分、再生会社財産は目減りします。
不当利得債権の責任は、貸主にあるとして、全額について補償に応じるかもしれません。ただし金融機関など債権者が同意するかはわかりません。ところで、クレディアは、保有貸金の2割に相当する過払いのための引当金を積んでいますが、証券化は、権利が保全されていないので、それを利用することはできません。

もうひとつ、証券化では、超過回収金をクレディアが取得できるよう証券化の期中利益は還流させていますが、それが途絶えます。超過回収金とは、
信託財産に生じる収入合計-費用合計=ネット利益
をさします。受託者により、毎月清算されて、委託者に返金されますが、その額は、年ベースでみると、
29.2x.92-3-1.5-10=12.364%(金利収入x延滞のない支払いのある債権-投資家金利-信託管理の年率と証券発行引受手数料の総額の年割の%、
ネット貸倒債権=ネット利益で、
これがクレディアに戻る分。また100億円の調達について、120億円の超過担保設定されますから、ネット利益の計算は、
(29.2x92%x1.2-3-1.5-10x1.2)/1.2=13.114%  
この金額がこれまでは、証券化の期中利益でしたが、今後は証券化のメインテナンスしても、こうしたサービス報酬はいっさい返って来ません。200億x13.114%=26億2280万円 
これも、仮にクレディアを相手に訴訟追行し過払い請求を主張される方方には、痛手になるでしょう。サービサー料も入らないのに、証券化のサービシングをしなくてはならない。信託事務の受任を信託側が解除をすることも出来ますが、準備されていたバックアップ・サービサーの発動により、コンビニでの振込用紙が送られてきて集金代行になってしまいますので、元本回収率は、一挙に悪化し、債務者に対する債務整理応もできません。


サービサーによるサービシング事務受託の解除、サービサーの費用求償権を認めるサービサー契約に信託契約を修正して、サービサーに留まらせる結果になる

またバックアップ・サービサーに交代されれば、金利は全額18%しか回収が許されません。その時点で、金利引きなおし計算して、元本が消滅していれば、返済が終了の通知を出すことになり、悪意で金利引きなおし前の債権額を回収することは判例法理上できない。過去に不当利得がすでに発生した債権は、その時点で全額債権が消滅して、存在していないことが確認される。
こうして混乱となり、投資家の打撃はさらに大きくなると見られますので、誰もサービサーの交代を認めないでしょう。そうすると、クレディア側が、費用負担についての求償さえみとめられない、不合理な委任なので解除をすることは出来る。あまりに低い金額なので、また解除がありえるという前提で、バックアップ・サービサーを事前に信託上任命しているのだから、委任解除の賠償請求という訴えの根拠はむつかしい。  

サービサーを継続させるためには、投資家同意のもと、信託契約の修正をし、費用求償を認めることが最も妥当な結論になるでしょう。
最低必要な固定費用を投資家側が払うことを同意することになる。たとえば、以下の数字は、経済的計算の上、正常債権総額x1%、初期延滞債権元本総額x3%、60日以上の長期延滞については、回収額x20%の報酬とかに信託契約の修正になるでしょう。
ところで受託者及びバックアップ・サービサーには、債権譲渡前の取引履歴は交付されておりません。譲渡後の履歴だけですので、バックアップ・サービサーは、債務整理に応じられないわけですから、サービシング不適格となります。格付会社は、倒産申請のためなど、万一のために、A以上の格付取得のために、バックアップ・サービサーが必須と求めますが、こんなことでは、投資家にとっては、何の追加的価値もくれません。
債権保有期間による不当利得責任按分に関しては、上記の通り。

4人にひとりの債権が信託に

問題は、200億円の証券化があるということ。そうすると担保に入っているのが、x1.25だとして、250億円。借入額、貸付残高のいずれも25%を占める? 負債に証券化が入っているかどうかはしりません。すなわち、債権は真正売買というこれまで破産裁判所が認めてきた手法で、売買されており、権利は信託銀行に移転されています。
4人にひとりの過払い金の請求先は、すなわち当事者適格というか、訴訟追行できる先は、信託銀行となります。クレディアは、真正に譲渡され、譲渡登記された貸金債権の回収事務を受任しているだけで、和解交渉したりすれば、その前に信託を解除して戻すか、買取する義務があります。他人の債権について、意思決定することができず、支払い免除などできません。そんな代理権はない。当然訴訟されても、私の債権ではなくなる。権限もない。信託から無償で戻すとしたら、投資家が損を被るから、損害賠償請求-->民事再生で免責に変わるけど、投資家が納得するか。そうすると、信託から戻せないわけです。
信託銀行は、外資系かもしれません。この手は、オリックス信託、新生信託、あおぞら信託、JPモルガン信託などが手がけていました。
金融庁は、1年前だったか、信託財産として的確かという見解をだして、牽制していますが、格付会社がAAを出すので、投資家にははまっています。たぶん劣後の部分などは、ヘッジファンドかCDOでしょう。
サブプライムな構造です。





なぜ民事再生か。

破産法申請しなくても、債権カットと従業員解雇で済ませて、経営者は、傷つかず、貸金業撤退して、他の業務をするというのでしょうか。こんな計画で、スポンサーががいるのでしょうか。
もし事業の承継者があらわれなくて、ただ銀行の借入金の減免を求めるのであれば、それを過半の債権者が納得するかですが、裁判所は、納得させるにたる特別扱いの根拠を示せないでしょう。
民事再生は、いきづまり、破産に移行?

経営者が経営権をそのままにして、債権者の同意をとって....不当利得返還請求の債権届出がなければ、届出のなかった過払い債権から放免されるのか。
静岡銀行など債権者とプリ・パッケージ(事前の再生和解ができている)事件かもしれないと穿ってしまう。なぜなら、過払いさえ防止できれば、2割も過払い金引当金を積んでおり、仮に貸倒損失が15%の範囲であれば、他の営業経費にまだ14%もあてられるので、借金は全額支払能力があるとみられるからだ。
過払いがでたら、最終的に傷むのは、貸金業者に金を貸して、回収できない銀行となる。弁護士が儲ければもうかるほど、クレディアは返済能力を欠き、銀行の懐はいたむ。

いずれにしても、銀行か誰か金融機関の裏知恵があってのことだろうか。
破綻して、株式も経営権をすべて地位をなくすというならまだしも、経営を続け、そして、債務者が債権届出が怠れば、過払い金から永遠に逃れられるというのか。手続き下での将来の不当利得返還訴訟を妨げることはできないだろうが。

民事再生申立時点で、不当利得はすでに存在していることがあきらかでも、届出をしなかったら、不当利得返還の権利放棄したことと推定されるか。少なくとも債権額不確知だろうと、争いがないというのであれば(判例法理でみなし弁済が否認されるというのが確定的であるから)、不当利得の届出は認められるだろう。手続き内で、不当利得の債権額を確定すればよいから。
クラスアクションのように、潜在利益権者の利益団体として訴訟追行できるならよいが、不当利得債権者の利益を守れるが、それもできない貧困な我が国、消費者保護法。

今般のみなし弁済をみとめない過払金の判例法理が固まる前と、それ以降では、業者の経営環境は様変わりしている。確かに裁判所の判断から、すでに不当利得が届出されすれば、争いのない債権ということで、事務的に金利ひきなおし計算されて承認されるだろう。消費者有利にみえる。

しかし、判例法理が確立する前のアエル破綻の時、過払い金が経営に重大な影響を与えない当時の再生申し立てと、今般の経営環境は大きくことなり、したがって申し立て動機も異なるだろう。
クレディアは、過払い金さえ発生しなければ、債権者に期限どおりに支払いができて、やっていけると判断されないのか。過払いがあって、貸倒+過払い合計で、債権額x18%以上となって、販売管理費合計14%が払えなくなり、営業を恵贈すればするほど、赤字が募ることになる。したがって、民事再生の目的自体が、過払い金をここで断ち切るという動機が、状況説明からも強く伺える。銀行にとっても、それがありがたい。だから申立に(裏では)銀行は賛成したのだろう。銀行は、過払い債権が、銀行への返済に優先されたら、いくら減免したら、やっていけるかも、不透明になる。
クレディアは破れかぶれで再生申したてしてみたのではないか。これで失敗しても、いずれ破綻はみえていたから、はやまっただけ。うまくいけば、不当利得の届出なくて、債権は消えるかもしれないと。


どの程度、信用悪化が見られるか。貸倒は年15%を超えているか。

事業継続すれば、赤字がでるほどに、債権のパフォーマンスは悪化しているのだろうか。たとえば、年率貸倒が15%をこえるとかの危険水域にあるのだろうか。そうでないとしたら、民事再生申立は、過払い金防止対策という色合いがあると考えざるを得ない。

その証拠に、証券化案件は、格付は監視銘柄にされたが、格下げになっていない。
通常、延滞や貸倒などが当初決められた水準を越えた場合、格付を維持するために、現金準備金を信託財産として積まない限り、予定された約定の償還期日よりも、早期の繰上げ償還が開始され、元利金の回収金全額が、投資家への返済にあてられる。そういう状況にはないようだ。

証券化では、通常、3年ほど、元本据え置き期間があり、その間は、担保から回収した元本については、リボや再度途上で既存客に貸したりして、担保の残高が維持できる。元本の返済が担保債権額の4%だとしたら、それがリボや完済された口座への貸付に回される。

仮に、10%の貸倒損失実績を前提に、AA格付の信用補完が決められる場合に、貸倒実績の3倍までのストレスに耐えられるように、構造化される。したがって、たとえば貸倒が15%に上昇したなど、一定限度信用悪化した場合には、現金を積んで、信用を維持する必要があり、それができなければ、繰上げ弁済事由となる。しかし、貸倒が20%にもなれば、すなわちある一定のれベルを超えてしまった場合には、超過担保掛け目によるが(100の調達額に対して、200%入っていれば、投資家の保全度合いは高い)、130%の担保ではAAは維持できなくなる。そうした準備金や超過担保掛け目が経済的に満たすことが、経済的にむつかしくなったとき、繰上げ弁済が開始される。準備金を調達額の50%も積めば別でしょうけど、何の運用益も生まない現金が信託されるくらいなら償還ということになる。

さてクレディアでは、そうした強制繰上げ償還がおこっていないこと、格下げがなかったことから、貸倒は18%を超えていないと見られる。


過払い債権は、本業の営業から生じる債権


アエルでは、ローンスターが事業管財人について、債権者が一本化されたから、まとまりがとれた。
今回は、過払い債権の返還を担保債権に優先させることができるか。アエルのとき、裁判所は、確か、過払い金債権を共益債権という判断はしてませんでした。そもそも当時はまだみなし弁済について、争いのある債権でしたから、(業者に不利な条件であれば)訴訟で金額を確定する必要があった時代のこと。今回は、過払い金債権の金額は、個々には小さいですが。全体でみれば、小額債権とはいえません。過払い金の全体額は大きく、債権者への影響、事業の再生にとって、その扱いが意味が大きすぎる。

次に、クレディアに対する銀行のローンを60%で買い取るファンドが表れたとき、どうなるか。その債権者は、手続き上、決して不当利得の特別扱いを認めないでしょう。年2割の利益を期待して投資するとしたら、不当利得を認めて割引価格を決めたら、30~40%になって、銀行は処分売りしないでしょう。購入にさいして、全口座を本日付で金利再計算したときの残存額を査定し、それに70%を乗じてくらいで買うことになるでしょう。
引きなおし計算しない元本額の6割なら、今日売れば、損金処理して終わりにできるから、売るでしょう。
私がファンドの経営者であれば、過半のローンを6割で購入できれば、再生案では、いっさい特別扱いを認めません。そんな法的根拠どこにもないでしょう。法的な正当性のない債権者不平等な不当な扱いを認める必要がない。裁判所が強制するなら、見返りをどうするか。もし、過払いを優先するなら、ファンドはつかないこととなる。

再生手続きでの過払い債権の扱い (別稿に分析があります)

① 申し立て時点で、すでに和解が確定したものについては、不当利得請求が確定しているので、債権額を届出ができる。
② 現在、訴訟外での和解交渉にあるものは、再生会社に引き継がれるが、訴訟手続きに移行するし、裁判外の和解の交渉については、中止される。
③ すると、金額不確定ながら、過払い金返還の可能性があれば、届け出て、再計算を委託する必要がある。
④ 過払いの認識がなく、届出を怠った債務者について、将来手続き下の再生会社に対しての訴えは、原因の発生が再生申し立て前といっても、届出をしなかったことで権利放棄が推定されて、排除されうるか。
⑤ 債権の届出の分類をどうするか。一般債権なのか。本業の業務に関連して生じた債権だから、また債権者への分配金にも影響するから、共益債権というわけにもいかないだろう。しかし、こうした不当利得債権を救済の減免対象にするか。

④については、訴えが一方的に退けられ、認められないということではないでしょう。債務者が契約上の関係者といっても、再生手続きに関する開示を、公衆が閲覧できるとはいっても、不当利得請求を届出しなければならなかったという認識がなかった、不当利得の発生を認識していなかった、できる状態にはなかった、あるいは利息制限法の基本的知識を欠いてその発生があったことを認識だにしていなくて、取引履歴開示がなされていなかったので、懈怠がなかったことを証明すれば足るとしたらどうか。そもそも、(i)貸金業法24条2項通知を送付することを怠って、債務者に債権の帰属も通知しないうえ、(ii) 金利再計算すれば、誰の債務が消滅しており、不当利得請求がが発生している債務者か認識できるのは、再生手続き申し立て者であり、そうした知られたる消費者債権者に、債権届出の通知を出していないのだから、債権不届出をもって、権利放棄の推定は横暴ではないのか。もし通知に手続き上の瑕疵があれば、将来の不当利得返還請求権は、手続き開始後でも、手続き外で、行使できると考えるとするのは、債権者平等に反するというのだろうか。

 リーマンブラザーズ 詐欺貸付の幇助責任ではすまされない、子会社の違法貸付の実態
他社が手をひくなか、2000年前から、機能していなかったサブプライム・モーゲージの証券引受委員会、リスク管理委員会。利益だけを追い求め、審査はいくら儲かるかで決まっていく。
会社として、何が行われたかの事実は、First Alliance Mortgage証券化の審査、引き受けのdue diligenceからみえる。
あこぎなリーマン predatory lenderの数年前の忌まわしい歴史の記憶が蘇り、それは今現実に起きていたという。

Subprime mortgage の問題で、すでに消えたはずの用語が、急に復活してきている。predatory lending。 
2000年代初め各州のanti-predatory lending act施行で、州HOEPA適用除外となったsubprimeの領域では、実質的predatoryはabusive lending practiceと名を変えた。unfair, deceptive loans 不公正、詐欺して、貸付営業をすることを意味する。中身は、度がすぎない程度の違いで、質的に、債務者から毟り取るという営業姿勢に変わりない。

2007年 6月27日、WSJのMichael Hudson記者は、詐欺貸付について、証券化による資金供給者としてLehmanが幇助責任を問われたFirst Alliance Mortgage事案の詳しい紹介とともに、全米11位の規模に育てあげた子会社BNCの会社を提訴する元従業員の証言や他をとって、リーマンがabusive lendingに手を染めていた証拠事実を紹介した。

BNCの不正貸付については、WSJの調査記事LENDING A HAND How Wall Street Stoked The Mortgage Meltdownにまかせ、First Alliance Mortgage裁判例を、概略してみよう。
 

In Re First Alliance Mortgage Co., et. al., 298 B.R. 652, 2003 U.S. Dist. 
手続きは、消費者クラスアクションを併合している。
共同被告には、Lehman Commercial Paper Inc., et al.,

 本件、連邦第9巡回控訴裁判所の判決は、今後の詐欺貸付に関する証券会社の幇助責任法理aiding and abetting liabilityの適用について、ひとつの有益なガイダンスを与えてくれるだろう。

不公正、詐欺貸付のabusive lendingの実態

 First Alliance Mortgageは、カリフォルニアで、消費者向け、特に高齢者に、高額のhome equityをもっている消費者に、home equity loanを貸し出す業務を主としていた。First Allianceは、貸付時のポイントやらその他手数料を請求していたが、金利や元本支払額に組み込んでしまって、それらがどのくらいなのかをわからなくしてはぐらかし、Truth in Lending Act にしたがった正確に開示することをせず、債務者を騙したというのが発見された事実。多くの債務者は、ポイントや手数料を請求されており、支払い合意した金額に平均して11%の上乗せがあった事実を認識していなかった。

金利、個別の借入手数料、すべての手数料を含むAPR(年率で計算された金利を含む費用)()は、Truth in Lending Actにもとづき、貸し手が借り手に対して開示を求められる。ARPが提示されれば、提示された金利の大小があっても、その他の手数料を含めてみたときに、どの条件が有利か、他社比較ができるようになる。一般に、不動産鑑定費用やタイトル保険などはAPR計算から除外されるが、どれが含まれるかについての正式な基準がないため、業者により、異なる結果となることがある。またローンが満期まで保有される場合と、5年で借り替えられてしまう場合では、APRは異なってくる。ローン期間が長ければ長いほど、APRは低くなり、ローン期間が短くなれば、APRは余分の元本支払分だけ上昇するという点についていえば、First AllianceのAPR説明は正しい。ARPの増加は、期間が短くなれば、手数料をふくめて借入れる「借入金額」は変わらないが、ローンの貸付手数料、その他のローン手数料は、借入手数料の大きな比率を占めるからだ。First Alliance Mortgageの手数料は高額のため、APR増加は劇的だ。First Alliance Mortgageは、貸付手数料、その他の手数料、プリペイメント損害金、真実の借入元本総額(ブローカー手数料、民間モーゲージ保険料などが元本上乗せされ、それらを借入額に含めて分割して支払われことがある)など、意図的に情報を開示しなかった。

手数料を含めた「借入金額」の開示というは、債務者が合意しているローン金額との混乱を招き、誤導する詐欺的手法である。First Alliance Mortgageは、貸付手数料、その他のさまざまな手数料、プリペイメント損害金を開示していなかった。借入金額という用語は、Truth in Lending Act、Regulation Zにおいて使われ、ポイントや大部分の手数料を除くローンのグロス金額と定義されている。ローン・オフィサーは、貸付手数料を、最低金利あるいはFirst Alliance Mortgageがローンをするのにかかる最低金額と偽って説明していた。

訴訟と捜査

     •  高齢者に対する不正abuse, 不公正で、誤導的貸付慣行があったとする消費者のFirst Alliance Mortgageに対する訴えは、1996年後半以降、急増した。
             Mary Ryan v. First Alliance Mortgage Co., et al., No. CV759815 (Aug.2,1996);
             Lucretia Wilder v. First Alliance Mortgage Co., et al., No.CV760638 (Sept 10, 1996);
             Velda L. Durney v. First Alliance Mortgage Co., et al., NoCV765935 (May 2, 1997);
             Henry M. Hong, Caro J. Hong v. First Alliance Mortgage Co., et al., No.784938-3 (1997)
     •  98年9月23日、First Alliance Mortgageは、法務省私権権局(civil right)から、連邦司法省及びアリゾナ、フロリダ、イリノイ、マサチューセッツ、ミネソタ、NY, ワシントンの各州の司法長官は、貸付行為について共同捜査を開始したという書簡を受け取った。
     •  98年10月30日、マサチューセッツ州司法長官は、州民を代表して、マサチューセッツ州上級裁判所に、First Allianceに対して、業界の一般基準からあまりに高額で、不当で、不法なポイント、手数料、その他の請求を差し止めるよう訴えを起こした。
     •  98年12月1日、イリノイ州司法長官は、イリノイ消費者詐欺法、イリノイ出資法、詐欺取引慣行法に違反するとして、First Alliance Mortgage を、Cook County 巡回裁判所に提訴した。
1998年12月3日、AARP(高齢者生活支援を目的とする消費者アドヴォケート)は、カリフォルニア州ビジネス・職業法17200条のもとづき、不公正業務慣行と高齢者に対する不正(abuse)を理由に訴えを起こした。
    •  1998年12月4日、ニュージャージー連邦地方裁判所に、ニュージャージー消費者保護法、Truth in Lending Act, 関連連邦規制違反により、クラスアクションが提訴された。
    •  1999年2月2日、カリフォルニア州第6控訴裁判所は、First Allianceの強制調停申立を認めないとする下級審Pagter v. First Alliance Mortgage の決定を是認した。
    •  1999年3月10日、ミネソタ連邦地方裁判所は、State of Minnesota v. First Alliance Mortgage Company, et al.事件について、First Allianceに対して、割引ARMを販売すること、および消費者に対して、「First Alliance Mortgageからのローンの手数料請求に関する重要通知」と称する追加通知すること、を未来永劫禁じた。裁判所の決定で、First Allianceは、借りようとする顧客にその他のいっさいの開示文書を提供する前に、通知を提示することが強制された。
    •  1999年4月23日、カリフォルニア州第6控訴裁判所は、Durney v. First Alliance Mortgage, et al.事案について、決定を下し、First Alliance Mortgageの強制的調停利用特約(提訴禁止条項)は強制力がないこと、First Alliance Mortgageの貸付主任の詐欺営業に基づき契約に至ったこととする第一審判決を是認する決定をした。
    •  1999年5月12日、AARPは、不公正、不法、詐欺、騙し営業行為慣行で、修正告発した。
1999年9月21日、ミネソタ州は、First Alliance Mortgageと、ミネソタ州の借り手に、50万㌦の還付する合意に至った。100人の州民借り手に、各$4000ずつと、他にFirst Alliance Mortgageで借換をした各債務者に$2000のクロージング費用。またFirst Alliance Mortgageは、ARMによるteaser金利商品を販売することが禁じられた。
    •  2000年1月、First Alliance法律顧問は、会社の係争中の訴訟リスクは、250~310万㌦に上ると見られると推定した。
    •  2000年3月、NY Timesは、First Alliance Mortgageの貸付手続きを極めて問題とする記事を出した。この記事は、Wall Street投資銀行の関与をほのめかし、特にLehmanの資金調達を担った役割について、焦点を置いていた。ABC Newsが、報道20/20で同様の内容をオンエアー。
    •  2000年3月23日、First Alliance Mortgageは、Chapter 11破産法適用申請する。

貸付金の資金源

貸付資金は、1998年12月まで、7年間にわり、プルデンシャル・セキュリティーズのコミットメント・ラインによって供与されてきたが、12月23日、プルデンシャルから突然の与信枠利用停止決定があり、First Alliance Mortgageは、監査法人からgoing concernさえも懸念されることになる。リーマンは、1998年12月30日、First Allianceが貸すモーゲージを担保にとって、ウエアハウス・ラインのためのconduitからの融資枠らの引出を承認した。(詳細は後述の通り)

1999年、1件あたり1億ドル、四半期ごとに4件の証券化の発行により、最終的に4億5千万ドルもの資金を供与がなされた。ウエアハウスによる引き出されたローンは、証券化によって調達される資金で返済が計画され、債務が消滅して、質権が解除され、証券化の担保設定がなされる。そして次のローンが引き出される。第一四半期3月19日、1億1500万㌦、第二四半期6月16日9千万㌦、第三四半期9月17日、1億1744万㌦、第四四半期12月17日、1億307.5万㌦。リーマンは、すべての取引で単独引受を務め、総額220万㌦の引受手数料を得た。こうして、First Alliance Mortgageは、不正な貸付の資金をリーマンに依存した。

1999年10月1日、リーマンは、First Alliance Mortgageに対するウエアハウス・ラインを1年延長し、2000年10月までとした。10月12日、リーマンは、First Alliance Mortgageウエアハウス・ラインを審査し、報告書を作成した。その報告には、オリジネーターの最大の懸念は、リーマンがFirst Alliance Mortgageの高コスト貸付の営業戦略で債務者ベースに晒される係争リスクであると記載してある。

リーマンのdue diligenceと融資関係

 リーマンは、home equity portfolioを担保に資金供与をするにあたり、数年間にわたりdue diligenceを行っていた。リーマンのFirst Alliance Mortgageとの最初の出会いは、Kurt Locherがmanaging directorとしてリーマンに入社した1995年に始まった。1995年6月、First Alliance Mortgageは、リーマンに、業務上のオペレーション、財務情報を含むdue diligence 秘密情報文書を送付した。7月、リーマンは担当者を派遣して、会社の組織構図、業容がリーマンが金融サービスを提供するに健全であるかのdue diligenceにあたらせた。

オンサイトDue diligenceレポートには、First Alliance Mortgageの強みと弱みが共に報告されていた。強みには、高額のhome equityをもつ潜在顧客に対するターゲティング、マーケティングと勧誘、潜在顧客が調印の席にいったん着いたときのクロージングをする能力、First Alliance Mortgageの引受指針に合致する債務者であること、債務不履行の可能性が低いことや、積極的な回収態勢などが上げられた。弱みには、home equityを有し、現金拠出が必要な債務者に対するローンの高い販売プレッシャー、高齢者に対する数多くのローンの実行、回収のやり方が積極的なため起こった法律紛争、借り手の所得というのではなく、担保価値だけに依存した貸付慣行など。担当者の報告では、この業界のどこかの業者に政府介入があるとすれば、First Alliance Mortgageは、一番前にいる候補者だと結論付けていた。

Due diligenceの一環として、First Alliance Mortgageと経営者に関してインターネット検索を行い、Seattle Timesが、1995年7月23日、First Alliance Mortgage営業マンのローン条件非開示についての消費者からの苦情に対して、ワシントン州が捜査しているという記事を見つけていた。

1995年7月26日、David Bartlettは、1億ドルのローン・ファシリティの承認を求める文書を作成した。7月28日、リーマンはオフィサーを含む3人が、First Alliance Mortgageの流通市場部長と、電話会議を開き、出席したひとりの役職者が、カリフォルニアでのクラスアクション和解の件とSeattle Timesの記事のワシントン州の捜査の件について言及した文書を残した。

リーマンの投資銀行モーゲージ証券コミットメント委員会は、ファシリティを検討し、承認したが、First Alliance Mortgageからは断られ、その後使われていなかった。

1996年9月、リーマンは、プルデンシャル・セキュリティーズの主たる融資枠に対するバックアップ・ラインとして ウエアハウス与信枠上限を2500万㌦として延長した。当初の利用のあと、与信枠は、1997年1月から6月までの間、使われることがなかった。1997年7月から9月にかけて、1500万㌦が引き出された。その後、1998年いっぱい、与信枠からの引き出しはなかった。

1996年後半から1997年にかけて、リーマンは、First Alliance Mortgageの公募証券化で(1996-4、1997-1、1997-2、1997-3号)、引受主幹事プルデンシャル・セキュリティーズのバックアップ・マネジャーを努めた。

1998年9月、バックアップのウエアハウスの与信枠を提供していたFirst Unionが、10月30日付け、バック・アップのウエアハウス・ファシリティを終了する旨の通知があり、リーマンはFirst Unionに肩代わりして、ウエアハウス・ファシリティを設ける関心があるかどうか、First Alliance Mortgage に確認をされた。リーマンは前向きに検討するとの返事で、First Alliance Mortgageは、手続きを開始するよう財務情報を提供した。

1998年12月半ば、リーマンは、First Alliance Mortgageに関連すべての記事と同社がかかわるすべての訴訟を調査し、First Alliance Mortgage主たる経営陣のバックグラウンド調査を行っていた。借り手や州の規制当局からいくつかの訴えがでているとのニュース記事が見つけられた。1998年12月、First Alliance Mortgageは、係争中の全訴訟リストをリーマンに提供した。そのなかには、さまざまなニュース記事で取り上げられていた州規制当局の処分が記載され、係争は、重大なものと通常業務のなかでおこるものに分類されていた。12月15日ころ、First Alliance Mortgageは、リーマンに、さまざまな企業due diligence文書と情報を提供し、そのなかには、組織図、経営陣の経歴書、収入内訳、自己の証券化レジデュアル持分の評価、四半期営業報告、プールごとのローン損失、1999年の予測草案、支店網と場所のリスト、プロダクション・ウォーターフォール、経営者書簡、First Alliance Mortgage とプルデンシャル・セキュリティーズとの延長修正暫定ウエアハウス並びに担保合意書が含まれた。

1998年12月16日、First Alliance Mortgageの会社顧問が、Lehmanに、イリノイ、ミネソタ、マサチューセッツ州司法長官らが申し立てるという告発のコピーをリーマンに送ったのは、リーマンが1億5千万㌦のウエアハウス与信枠の提供する前だった。リーマンの社内法律顧問は、First Alliance Mortgageから受けとった告訴と、First Alliance Mortgageに対するいくつかの係争で結審された命令を審査した。これらの告発のほぼ全てが、ローン担当者と借り手との間の営業上のトラブルだった。12月23日、First Alliance Mortgageは、リーマンに、3州の訴訟、消費者詐欺に関する18の訴訟、司法省検査を開示する訴訟予定表をファックスした。

1998年12月23日ころ、プルデンシャル・セキュリティーズは、First Alliance Mortgageとのウエアハウス・ファシリティを更新しないと伝えてきたことは、First Alliance Mortgageにとって寝耳に水だった。契約は、1998年12月31日に終了する。First Alliance Mortgageは、代替のウエアハウス与信枠が12月末までにみつけられなければ、監査人からgoing concern意見を取り付けられない怖れが生じる事態となった。

1998年12月30日、リーマンは、First Alliance Mortgageと基本買い戻し合意書Master Repurchase Agreement(以下「MRA」)を結び、それにしたがい、Lehmanは、First Alliance Mortgageに、First Alliance Mortgageの有するモーゲージを担保の1億5千万㌦のウエアハウス与信枠を供与することを合意し、同日付、調印され、翌日、およそ1753万㌦が引き出された。ウエアハウス・ライン供与の見返りに、First Alliance Mortgageは、リーマンに220万㌦のコミットメント手数料、借入残額に対する金利支払い、未利用枠の残額に対する手数料を支払うことに合意した。ウエアハウス・ラインとgoing concern意見がなかったら、First Alliance Mortgageは、ほぼおそらく業務撤退していたか、消費者ローンを直接調達することができなくなるほど、大きな業務内容の変更、貸付の劇的な減少を迫られていたとみられる。

MRAの融資条件は、担保として質権設定されたモーゲージ価値の95%を融資するというもので、融資枠からの引き出しは、質権設定されたモーゲージ・ローンの額面価値の95%を上限とした。MRAの財務制限条項として、First Alliance Mortgageには、最低株主資本として6560万㌦、調整有形純資産価値として3250万㌦を維持することが要求され、また総レバレッジ率は5倍を超えてはならないことが求められた。

提出物として、四半期及び年次財務報告、First Alliance MortgageはMRA期間中、MRAの条件、要求にしたがっていることを証明する経営役職者の証明が求められた。ウエアハウス合意の規定では、調達の継続は、Lehmanのdue diligence調査を合意から45日以内に満足して終えることを条件としていた。1999年1月11日、Skadden Arpsは、due diligence要求リストを作成し、First Alliance Mortgageに送付された。リストには、政府訴訟に関するすべての情報を含んでいた。First Alliance Mortgageは、翌日即刻、求められた情報を送付した。1月12日、First Alliance Mortgageは、それに追加して、引受ガイドライン、First Alliance Mortgageの不動産鑑定マニュアル、収入明細、QC手続きマニュアルを提供した。

1999年1月14日、両者の代表者と間で会議がもたれ、First Alliance Mortgageの設立以降の歴史、貸付プロセス、引受、サービシング、クオリティ・コントロール、システム、これまでの証券化案件を含むすべての観点から業務オペレーションが査定された。訴訟については、もっとも大きな時間が費やされ、First Alliance Mortgageが重大とした訴訟事案名がリストされ、1件1件訴訟の現在の状況について概説された。リーマンのdeal teamメンバーは、8名だった。

1999年2月、当初First Alliance Mortgageをオンサイト訪問してdue diligenceを行った担当者は、ウエアハウス貸付グループから、同氏の事実認識と結論についての文書にまとめるように依頼された。1995年のdue diligenceレポートと同様の点に言及していたが、色調ははるかに楽観的だった。気がかりは訴訟で、特に州や協力なAARPの参入動向だった。

1999年2月5日、リーマンのクレジット・リスク管理は、資本レベルが十分であること、ファシリティのストラクチャーと条件を前提に、First Alliance Mortgageのため、コミットメント期間1年の1億5千万㌦のリバース・レポ・ファシリティ(3ヶ月を最大とする)を要請するレポートを出した。

1999年2月11日、リーマンのコミットメント・コミッティが開かれ、First Alliance Mortgageに対するウエアハウス・ラインと証券化を進めるかどうか検討された。コミッティ・メンバーに出された報告書には、1999年2月1日付けの担当者のdue diligenceメモ(1995年のdue diligenceメモが添付された)、First Alliance Mortgageの訴訟すべての概説が添えられた。報告書には、リーマン・ブラザーズの得られる手数料の総額は、450万ドルが予定されると書き込まれ、1999年First Alliance Mortgageの証券化でリーマンが単独引受主幹事の役割をすることを承認することを推薦していた。同会議で、コミットメント・コミッティは、全員一致でFirst Alliance Mortgageへのウエアハウス・ライン供与と証券化を承認した。

1999年から2000年にかけて、リーマンは、Clayton Groupに委託して、First Alliance Mortgageの貸し付けたloansのdue diligenceを行った。Claytonは、ローン及びローンの裏づけとなる文書が貸し手の要求やモーゲージに関連する州や連邦法規制にしたがっているかなど、ローン分析に特化したサービスを提供している。

リーマンDue diligenceまとめ
リーマンは、home equity portfolioを担保に資金供与をするにあたり、数年間にわたりdue diligenceを行っており、与信枠のコミットメントを求める受委員会への報告には、First Allianceに対して、96年以降継続して、詐欺の告発や多くの訴訟が提起され、司法省や州司法長官からの捜査などがはいっており、最大の引受リスクは、訴訟リスクだと記載されていたので、会社としてそれは認識されていた。vice presidentは、First Allianceが営業慣行を変えなければ、捜査の目が入るだろうと、報告していた。しかしリーマンは、それよりも、450万ドルの引受手数料のほうを選択した。

 リーマンのdue diligenceには、First Allianceの組織機構、経営方針だけでなく、ウエアハウスの担保融資から証券化が予定される対象となるモーゲージの引受方針、貸付方針、貸付ガイドラインも含まれており、コンプライアンス違反についても調査された。裁判記録には、説明こそないが、そこには高額の手数料についてもヒヤリングされ、コンピューター・データとしても提供を受けたと考えられる。98年末、プルデンシャルの突然の与信ラインの利用停止の主たる理由が、同社に対する大きなエクスポージャーというだけでなく、すでに発生していたさまざまな訴訟リスク上から来ていたことは推認できるだろう。

破産申請

2000年第一四半期、First Alliance Mortgageは、7700万㌦をリーマンのウエアハウス与信枠から引きだしていたが、2000年3月23日、返済することなくFirst Allianceは破産申請をした。2000年10月9日、破産法1102(a)(1)にしたがい、破産裁判所の命令で、借り手コミッティが任命された。2002年、9月10日、裁判所は、債務者の第一回修正の手続き併合の共同清算計画(5月6日付け)を確認し、債務者の実体的連結動議を承諾した。計画V.E.項では、破産管財の全未清算資産には、対立事件である債務者コミッティのLehman Commercial Paper Inc.およびLehman Brothers Inc.に対する請求が含まれる。   
消費者から、Lehmanに対して、幇助理論にもとづき、First Allianceの不正営業行為責任を求めるクラスアクション訴訟が提起された。消費者は数々の事実を示した上で、カリフォルニア法で、リーマンには賠償責任があると主張した。

 •  First Alliance Mortgageは、通常の営業行為のなかで、詐欺貸付をおこなっていた。
•  リーマンは、そうしたFirst Allianceの詐欺行為について、実態を認識していた。
•  リーマンは、First Allianceが詐欺をはたらくことを実質的に支援していた。

第9巡回控訴裁判所(2003.6.30)は、First Allianceの不正にリーマンの加担があったことについて、あいまいな嫌疑以上を求めたうえ、Lehmanは、本人のした特定の不正行為の実態を知っている立場にあったに違いない判示した。陪審員は、リーマンは、First Allianceの営業慣行では、胡散臭いことが行われているという以上のことを知っており、与信枠がそうした詐欺貸付の支援をするものだったと決定した。

 第9巡回裁判所は、リーマンが、First Alliance Mortgageが詐欺貸付営業を慣行化していたことの実態を認識していたと結論付けるに十分な合理性があるとして、陪審員がこうした事実やその他の証拠に依拠しているとした。

 破産申請があった時点で、リーマンは、ウエアハウス与信枠で、7700万㌦を貸しており、未証券化のままだった。消費者の訴えは、破産手続きにおいて、リーマンにモーゲージ質からの回収を優先するのではなく、equitable subordination法理によって、さらにはモーゲージのリーマンのコンディイットへの移転を危機否認して、一般債権者以下に扱おうというものだったが、裁判所は、equitable subordination法理は、債権者救済のために適用される法理であって、罰を課すための適用法理ではないと意見し、また詐欺的譲渡(fraudulent conveyance)危機否認の適用を認めず、質権設定の譲渡の効力を認め、担保からの回収に加えて、利息を含めて8300万㌦の支払いを認めた。

 証券法11条のdue diligence責任は、conductしていれば、責任は免責されるが、貸付方針を調査していて、法外な手数料が取られていることの認識を欠いたり、詐欺貸付が原因で訴訟が相次いでいた状況を知りながら、実態を調査していないとすれば、due diligence抗弁が認めるだけの根拠があるのか。due diligenceを然るべくしていれば、実態の認識をもったはずであり、資金供与は、詐欺を増殖させる機会を与えることを知りつつ、後押ししたことになる。すなわち、十分なdue diligenceをしていないとしても、違法性ある過失の有責性が問われ、due diligenceをしていれば、詐欺貸付を認識しながら、資金供与をしたことになり、それがなければ、営業が成立していないという点で、もうひとりの行為者secondary actorとしての責任を免れない。

 証券化された証券には格付は取得されていたはずだが、投資家からの苦情はでていないとみられる。損害は出ているだろう。なぜなら、証券化の対象となるローンに関して、詐欺貸付で、損害賠償性急が起こっているのだから、正当理由があれば、HOEPAにもとづき、解約とされることができるだろうし、First Allianceは倒産しており、補填できないのであえれば、投資に損害がでるのは、必然だからだ。なお倒産処理手続きでは、投資家からの補填請求の訴えはないとみられる。

不正貸付調査には責任を負わない格付機関

破産手続きとは別に、投資家は、リーマンに対して、幇助責任を求める訴えがあったかもしれない。投資家による訴訟がなければ、格付に対する非難も出ていない。訴えられても、格付は詐欺貸付の実態を知る立場になく、知らされておらず、立場上発行者側でないので、due diligence責任も問われないからだ。First Alliance Mortgageとの経営者や与信担当責任者、営業責任者との会議で、すでにメディアを通じて、First Allianceの不正貸付、法違反の噂をしっていても、その確認のため、それについて尋ねなければならない理由はないし、First Allianceが、そんな事実がないと説明すれば、それを真に受けて、提供された説明が虚偽であろうとも、調査義務はないし、正確であることを前提にして、格付されていれば、すべての責任を免責される立場におかれていることを、投資家は満足しているからだ。虚偽であることは、騒ぎが公知となれば、いつかは見つけられるだろう。そのとき、格付を消滅させればいいが、そうした法律上の問題について、格付は、かかわらないし、silentを通す。

消費者が求めるdeep pocketはどこか
裁判所は、貸付の前線にたって貸した主役だけでなく、裏にいた経済的支援者のsecondary責任を追及することを認めた。さらに、もうひとつ注意点は、消費者が傷をおった場合、陪審員は、懐の深い相手先を攻撃できるというもの。特に、驚きは リーマンに対する証拠が、がFirst Alliance Mortgageの詐欺貸付慣行の実態を認識していたと結論付けるに十分であると見出したことだ。First Alliance Mortgageに対する捜査も訴訟も、ただ告発や申立であって、詐欺があったという証拠ではない。しかしながら、控訴裁判所は、この点について、事実認定審の決定に従い、もう一度別の陪審員の意見を聞くことには躊躇が逢ったようだ。

 FTC Holder in due course doctrine 

 モーゲージ貸付の世界であれば、不正営業行為についての実態認識が求められるが、割賦販売金融では、FTC規則 Holder in due course doctrineが適用されるため、実態認識がなくても、資金供給者は、責任を追及させることになる。Truth in Lending Actの適用を受ける割賦販売金融契約は、FTCルールの適用をうけ、消費者契約には、割賦販売金融契約の譲受保有者(証券化のコンディイット、受託者が含まれる)は、当該契約の譲渡者に対して債務者が有するいかなる主張、抗弁からも切断されないという債務者への通知が求められる。このルールで、債務者は、譲受者が貸し手の不正の実態を知っていたことを証明する必要がなく、不正による損害に対して、共同責任equal liableが認められる。ただし、due diligenceして知っていないことが証明されれば、免責される。

 FTCのHolder in due courseルールでは、損害額が限定される。消費者は、契約にもとづき、実際に支払った金額だけについて救済されることができ、その後の債務残高の回収は禁じられる。 それに対して、州法による消費者保護法にしたがい、aiding and abetting 幇助責任法理では、消費者は、幇助者から、3倍責任、懲罰的損害賠償、弁護士費用についての回復が認められうる。ただし、割賦金融においても、ローンの譲りうけた保有者も、当初貸付業者の不正の実態を知っていたとの陪審員の決定があれば、全財産を剥ぎ取られる怖れがある。

コンプライアンスに関する田中弘幸教授の誤認識と再検討を問う

それにしても、アメリカ金融監督機関というのは、違法貸付についてのコンプライアンスのガイドラインも出していなくて、Regulation Zを発布していても、不正営業行為については、監視も、処罰もなく、消費者との不正、詐欺貸付紛争は裁判所任せで、監督機関はできるだけ民事不介入が方針のようだ。(サブプライム・サービサーに損失緩和策をとるようにと銀行監督機関の共同声明 ver.4 の⑤参照)

きんざいの月刊消費者信用で6回にわたる連載で、コンプライアンスと取締役の義務を論じられた田中幸弘教授は、法規制違反、コンプライアンスについて、ことさら厳しく罰する基準があるかのごとくに説かれるが、コンプライアンスの生みの親の国の金融コンプライアンスは、こういうことを言うのです。
それにしても、「コンプライアンス+田中幸弘」でグーグルと、数ページにわたり、同氏のコンプライアンス意識が理解できます。アメリカ法コンプライアンスのむつかしさは、連邦法、州法があり、それに金融機関のルールメーキングがあって、複雑です。サブプライム住宅ローンの金利って いくら?

我が国も金融機関も、田中教授が説かれる規範考量などなく、リーマンと取引し、利益をもたらし、間接的にも、First Alliance Mortgage貸付の原資を与えるのに、いささかの後ろめたさなど、感じていないのだ。法に照らして罰せられない範囲で、経済活動は自由なのだから。田中教授よ、現実を認識し、自らの理解の誤りを認めなさい。さもなければ、我が国金融機関が、捕食貸付に手を貸していたリーマンとの付き合いの認められない法的根拠がありますか。ただの倫理規範と処罰と救済の定めのある法とは違います。法違反がない限り、処罰などされるものですか。

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